SIP対応を表明したフュージョン,その思惑

フュージョン・コミュニケーションズは,ADSLやCATVの事業者と組み,SIPによるIP電話サービスを今夏にも開始する。これに先立ち,SIP機器ベンダーを対象に呼制御のインタフェースを公開,実証実験への参加を募る

【国内記事】 2002年4月1日更新

 VoIP技術でマイライン参入を果たしたフュージョン・コミュニケーションズが,アクセス系のIP化を狙って動き出した。ADSLやCATVの事業者と組み,SIPによるIP電話サービスを今夏にも開始する計画だ。


フュージョン・コミュニケーションズの角田忠久社長

 専用IP網を使って中継回線をIP化した「IP中継電話サービス」を昨年4月より提供し,1年間で約120万回線(3月末現在)を獲得した同社。全国どこでも3分20円という料金でマイラインにも参入し,県外通話の登録シェアで1.9%(2月末現在)を獲得している。

 電話事業で地歩を固めつつある同社だが,一方でアクセス系のIPサービスは企業向けのIP-VPNと個人向けのダイヤルアップ接続のみ。いわゆるブロードバンド接続サービスは持っていない。

 「出発点としての中継系IP電話サービスは技術的問題をクリアできた。次は,顧客を直接(フュージョンの)ネットワークに引き込む仕組みが必要だ」(角田忠久社長)。

 ただし,最後発として回線事業に参入するよりも,既存事業者と組むほうが手っ取り早い。角田氏によると,すでに複数の回線事業者やISPと交渉を始めているという。3月26日に発表されたケイ・オプティコムとの提携もその一環(3月26日の記事を参照)。回線事業者側は,フュージョンのネットワークと相互接続するだけでIP電話サービスを提供できるのが最大のメリットだ。

サービスの仕組み


サービスの概念図。自社網と提携キャリアのネットワークだけなら品質保証も可能だが,後述のモビリティ機能などでインターネットを利用するため,分類上は「インターネット電話」になる(クリックで拡大)

 フュージョンは,自社のVoIPネットワークにSIP対応のクラス5ソフトスイッチを導入する。クラス5スイッチは,既存の市内電話交換機と同様の呼制御を可能にするもの。音声信号と制御信号を別に扱うことで,既存の固定電話と同様の使い勝手を提供できるという。

 例えば,ユーザーが受話器を持ち上げると,スイッチ側でユーザー(端末)の認証を行い,端末に対して音声パケットに埋め込むIPアドレスを指示するといった具合。電話機型の端末を使っているユーザーであれば,それがIP電話であると意識する必要はない。もちろん,IP電話専用端末のほか,PCやVoIPアダプタなどを使ってサービスを利用できるようになる。

 ただし,SIPはパケット内にIPアドレスを書き込む仕様のため,ブロードバンドルータを設置している場合など(ルータ越え)はコツが必要だ。固定のグローバルIPをVoIP専用に割り当てることのできる接続サービス(有線ブロードやKDDIのFTTHなど)は別として,1つのグローバルIPアドレスを動的に割り当てるADSLやCATVの場合,ルータの下はプライベートIPアドレスになりがち。「Windows Messenger」を使う場合であればUPnPという手段があるが,これも対応している機器はごく一部に限られている。IPv6も先が見えない状況のなかでは,各キャリアと機器ベンダーの個別対応が焦点となっている。

 このため,フュージョンでは,SIP機器ベンダーを対象として,5月に開始する実証実験への参加を広く呼びかけている。4月1日より,RTP信号のインタフェース仕様(呼制御の部分)を公開し,広くパートナーを求める方針だ。角田氏は,「ビジネスチャンスはあるから,一緒にやりませんか? というのが募集の主旨」と話している。

 実証実験は,5月から3カ月間のスケジュールで行われる。夏以降,実験を終えた部分から順次商用サービスへ移行する計画だ。もちろん,その時期には総務省の方針が確定し,いわゆるインターネット電話にも着信用の電話番号が割り当てられるという目算がある(1月7日の記事を参照)。

「事業計画そのものは詰めている最中であり,具体的なサービス形態や料金はISPやDSL事業者との今後の話し合いによるだろう。ただ,現在の3分20円を下回る魅力的な価格になることだけは確かだ」(角田氏)。

 新サービスでは,両端に加入者電話を使う現在のIP電話と異なり,発信側のアクセスチャージをNTTに支払う必要がない。この点が低価格化を後押しするだろう。しかし,通話以外の収益源を持たない同社だけに,既存のインターネット電話や「BB Phone」のように,IP電話同士の通話を無料にすることは難しいという。

SIPを採用した理由

 フュージョンがSIPを採用した理由は,端末数と発展性を考慮したためだ。「ポイントは,マイクロソフトのWindows XPにMessengerがプリインストールされている点。これだけで数億台の端末が存在することになる」(角田氏)。これにくわえ,SIPの持つTV電話など各種マルチメディア機能や,モビリティ機能の付加といった展開を検討している。

 モビリティとは,ユーザーが不在だった場合に携帯電話やメールといった手段を使ってメッセージを転送する,いわゆるユニファイド・メッセージのこと。例えば,留守番電話の代わりとして携帯電話にボイスメールを送ったり,出張時の宿泊先に電話を転送するといったことが可能になる見込みだ。「ネットワークに接続してさえいれば,どこでもメッセージを受け取れる。特に企業ユーザーには重要なサービスとなるだろう」(同氏)。

 同様に,フュージョンのIP網内にMCUを設置し,ISDN網と相互接続すれば,コーポレート市場のTV会議システムとして主流になっているH.320と接続できる。

 こうした企業向けの高付加価値サービスで収益を確保しつつ,回線事業者との提携でユーザーの裾野を広げる。今回の発表は,IPと電話の融合(フュージョン)を掲げる同社の事業が,第2のフェーズに入ったことを意味している。

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[芹澤隆徳,ITmedia]

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