ニュース 2002年7月5日 05:50 AM 更新

無線LAN、時代は“デュアルモード”へ

N+Iの展示会場では、機器ベンダーとチップベンダーがデュアルモード対応を競い合った。無線LANチップでは、先行した米Atherosを追うように、各社が2.4GHz帯と5GHz帯のデュアル対応チップを計画している

 無線LAN機器ベンダーは迷っている。手軽さと低価格化で広く普及しているIEEE 802.11b(以下11b)、マルチメディア用途でも期待が高まる高速なIEEE 802.11a、さらにIEEE 802.11gもドラフト仕様が固まり、年内には正式な標準規格が策定される。どれを選択すればユーザーは満足し、かつ利益を上げることができるのか。その回答は、“デュアルモード”のようだ。

 「NetWorld+Interop 2002 Tokyo」では、機器ベンダーとチップベンダーがデュアルモード対応を競い合っている。インテルが「インテルPRO/Wireless 5000 LAN デュアル・アクセス・ポイント」を発表すれば、NECは「PK-WL010」用の「802.11aアップグレードキット」を参考出展。さらに自社開発の11a対応チップセットをアピールするため、「DualModeAccessPoint」の試作機を展示した。


NECインフロンティアの「802.11aアップグレードキット」。無線LANカードとダイバーシティアンテナをセットにしたもので、「PK-WL010」を11a/bのデュアル対応にする。7月30日より出荷予定で価格は3万〜3万5000円


NEC初の無線LANチップセットを使った「DualModeAccessPoint」。NECのIEEE 802.11aチップセットは、ベースバンド処理専用のプロセッサを内蔵し、ホスト(PC)側の負荷を大幅に軽減するという。ただし、11bについては他社製チップセットを使用している

 現時点で、機器ベンダーが11aだけをサポートするのはリスクが大きい。期待と価格は高い11aだが、まだ欧州では「HyperLAN2」が幅をきかせており、11aは「いわば、地域限定標準仕様」(WECA、アジアマーケティング担当の富樫浩氏)。また、5GHz帯を使うため、2.4GHz帯の11bとは互換性がない。つまり、11aのみのサポートは市場を狭めることに繋がってしまうわけだ。事実、米Microsoftなどは「802.11aオンリーの製品はWindows認定対象外」(6月の記事を参照)という判断を下している。

無線規格周波数帯最大速度実際のリンクレート
IEEE 802.11b2.4GHz帯11bps3〜5Mbps
IEEE 802.11a5GHz帯54Mbps15〜20Mbps
IEEE 802.11g(OFDM)2.4GHz帯54Mbps10数Mbps
PBCC(11gのオプション)2.4GHz帯22Mbps7〜8Mbps
リンクレートはWECAおよびTIのテストによるもの

 ただ、デュアル対応にするといっても話は簡単ではない。個別にチップを使っていては、コスト面で不利になるからだ。ちなみに、上で挙げたインテルやNECのデュアル対応アクセスポイントは、IEEE 802.11a/bそれぞれのチップセットを搭載してデュアル対応を実現している。そこで注目が集まっているのが、最初からデュアルモードをサポートしたチップセットだ。

Atherosを追うチップベンダー


米AtherosのminiPCIリファレンスデザイン。左上の黒いチップが2.4GHz用RF、左下が5GHz用RF、中央下がメインチップだ。「片面実装のmini PCIカードを作れるコンパクトさが魅力」(Atheros)

 米Atheros Communicationsは、802.11a/b/gをサポートする「AR5001X」(3月の記事を参照)を出展。miniPCIカードやアクセスポイントなど、多くのリファレンスデザインを展示している。「既にFCC(連邦通信委員会)やTELECの認定を取得しており、夏中には量産出荷を開始する」(同社)。

 AR5001Xは、11a/11bにくわえ、11gドラフト仕様のOFDM方式に対応。RC4に代わる次世代の標準暗号化方式であるAES(Advanced Encryption Standard、5月の記事を参照)やIEEE 802.11e準拠(予定)のQoSもサポートする。


Atherosの隣にブースを構える米Z-Comは、早速、AR5001Xを採用したアクセスポイントや各種無線LANカードを展示。「8月より出荷を開始する」という

 Atherosに遅れをとった格好の他のチップベンダーも、デュアル対応への準備を着々と進めている。

 11g対応チップを2003年第1四半期にリリースすることを既に表明している米Intersilは今回、新たに「2003年第2四半期に11a/gのデュアル対応のチップセットを発表する見通し」を明らかにした。また、米Texas Instrumentsも「2003年の早い時期」をメドに2.4GHz帯と5GHz帯の両対応チップセットをリリースする計画を打ち出している。無線LANチップベンダーの開発競争が、今後“デュアル”を巡って激化することは間違いないだろう。


米Intersilは、ちょっと違うデュアルチップを展示している。BluetoothとIEEE 802.11bの両対応チップセット「BLUE 802」だ。携帯電話とPCをBluetoothで繋ぎ、さらに無線LANでインターネットに接続するデモ

Intersilのロードマップ 
2002年8月IEEE 802.11a対応の「PRISM INDIGO」
2003年第1四半期IEEE 802.11g(OFDM)チップセットリリース
2003年第2四半期IEEE 802.11a/g対応チップセットリリース


TIはIEEE 802.11bとPBCCのデュアル対応製品を展示。IEEE 802.11gのドラフト仕様策定にあたり、Intersilの推すOFDM方式に主役の座を奪われてしまったものの、「既存の2.4GHz無線LANでは最速の22Mbps」を武器に米国などで販売中

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関連リンク
▼ NEC
▼ Atheros Communications
▼ Intersil
▼ Texas Instruments

[芹澤隆徳, ITmedia]

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