ニュース 2002年11月22日 08:51 PM 更新

「COMDEX/Fall 2002」での無線LANの話題

ラスベガスで開催中の「COMDEX/Fall 2002」では、2.4GHz帯と5GHz帯の両方をサポートするデュアルバンド無線LAN製品が話題だ。無線LANの高速化は、家電ベンダーの意図などもあって、コンシューマーの普及が先行しそうだが、PCベンダーはこのへんを、どう考えているのだろうか?

 先週、ソニーのIEEE 802.11a/bデュアルバンド対応製品を紹介したが、5GHz帯を利用して最大54Mbpsの通信速度を実現する802.11aは、一般への普及を徐々に果たそうとしている。COMDEX/Fallでも2.4GHz帯と5GHz帯の両方をサポートするデュアルバンド無線LAN製品が話題だ。

 この記事を書き進めつつ取材をしている「COMDEX/Fall 2002」でも、話題は無線LANの普及やローコスト化の可能性、使い勝手の向上、帯域保証プロトコルといった昨年の話題はすっかり影を潜め、デュアルバンドソリューションを提案する無線LANチップが注目を浴びている。


デュアルバンドはどこで必要?

 無線LANの高速化は、ホームAVネットワークの構築を目指す家電ベンダーの意図などもあって、コンシューマーの普及が先行しそうだ。しかし現在、高速な無線LANといえば5GHz帯しかなく、従来の11Mbpsの無線LANとの互換性がない。そこで2.4GHz帯と5GHz帯の両方に対応できるデュアルバンド化が注目されているわけだ(関連記事12)。さらに2.4GHz帯で最大54Mbpsを実現できるIEEE 802.11gに対応した無線LANチップも、このCOMDEX/Fall 2002でいくつか発表された。いったいどちらの方向に向かうべきなのか、道しるべを失ったように感じている人も少なくないだろう。

 そもそも、802.11gが802.11aと同じぐらいの通信速度を実現できるのであれば、何も互換性の低い5GHz帯を使う必要性がない。いや、電子レンジと使用周波数が重ならない5GHz帯じゃないとAVストリームが安定しなくなる可能性があるんじゃ? いやいや、そもそも5GHzなんて波長が短すぎて、家中をひとつのアクセスポイントでカバーできないよ。いやいやいや……。

 もう少し冷静になった方がいいだろう。それほど気にしなくても良いというのが、個人的な意見。特に自宅のインフラの選択は、予算に合わせてどちらにしてもいいんじゃないだろうか?

 たまたま現在は無線LAN高速化の狭間になっているが、いずれにせよ54Mbps程度(実効帯域は20〜25Mbps程度)の通信速度では、すぐに帯域が足りないといわれるに決まっている。生涯の資産じゃないのだから、難しく考えない方がいい。

 モバイルPCの場合、さまざまな場所で使うため、デュアルバンド化は重要だ。多くのホットスポットは2.4GHz帯だが、人がたくさん集まる場所の場合はユーザーの少ない5GHz帯の方が繋がりやすいというメリットも。AVストリームを扱いたい家電ベンダーは5GHz帯を使うところが多いかも。そんなわけで、いろいろな場所使うにはデュアルバンドの方が望ましい。

 しかし、自宅のアクセスポイントを選ぶ場合、自分のPCで使えさえすればいいのだから、デュアルバンドである必要はない。2.4GHz帯でも5GHz帯でも、「お好きな方をどうぞ」ということになる。もちろん、現時点で無線LAN内蔵のノートPCは802.11bに対応したものしかないのだが、アクセスポイントは一度購入して設置すると当面は買い換えないものだから、納得する方を使えばいいんじゃないかな?

来年の初めに欲しいと言われても……

 ところで、PCベンダーは無線LANのトレンドについて、どのように考えているのだろうか? 実はPCベンダー各社も、様子を見ている段階のようだ。来年の3月に登場が見込まれているインテルのBaniasプロセッサ搭載ノートPCは、802.11a/bデュアルバンドの無線LANチップがセットで使われることが多くなるだろう。そうなってくると、現在は互換性の問題でいまひとつ普及が進んでいない802.11aを自宅に導入しても、その後、内蔵するPCがほとんどないといった事にはならない。デュアルバンドの方が、顧客に対して訴求しやすいという事情もある。

 結局のところ、“全部入り”が将来的に主流になるのは目に見えている。802.11gの無線LANチップは802.11b用チップの延長線で作れるため、実はそんなにコストアップしないのだ。実際、COMDEX/Fallで展示していた米Linksysは、802.11g対応のシングルバンド製品(802.11bも利用可能)の価格が従来製品とほぼ同じになると話していた。さらにCOMDEX/Fallでのトレンドを見ると、結局のところ802.11g対応チップのほとんどはデュアルバンド対応になっている。

 ただ「来年の春モデルのノートPCに内蔵する無線LANを全部入りにしてほしい、なんて考えている消費者が多いと困ってしまう」とはあるPCベンダー。言い換えれば、夏以降には全部入りが徐々に増加してくるわけだ。どうせ将来、全部入りに収斂していくならば、なんだかんだと気にするのも、ちょっとばかばかしい気がする。

 また、無線LANチップはデュアルバンドや最大速度といった要素だけでなく、消費電力や将来の規格への柔軟性なども問われる。またチップ自身のサイズや必要チップ数によって、最終的な製品にも変化が出てくる。そうしたことにも目を向けておきたい。


今回のCOMDEX取材で一番のお気に入りは、Athlon 64でもTM8000でもなく、この「Am1772」リファレンスデザインボード。とくにミニPCIに注目。基板は半分以上も空いている。裏面には何も実装されていないため、実質3/4が空いていることに

 たとえば、AMDの発表した「Am1772」無線LANチップセットは、非常に小さな実装でノートPCに内蔵するミニPCIカードの片面半分以下で802.11bの機能を実現してしまう。このため、マルチファンクションのミニPCIカードを非常に作りやすい。またこのチップはAMDが買収したAlchemy SemiconductorのMIPSプロセッサコアがメディアアクセスコントロール(MAC)を制御しており、ドライバレベルで異なるMACに対応できてしまう(2月の記事を参照)。デュアルバンド化を行うためには、MACの機能変更とトランシーバの追加を行う必要があるが、採用するカードベンダーの方針次第では802.11g対応へのアップグレードや、帯域保証制御などの機能追加を行なえる。しかも消費電流は受信時に134mA、送信時には232mAというから、なかなかの低消費電力だ。

 あまりデュアルバンドばかりに目が行っていると、こうした製品を見逃すことになるかもしれない。

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[本田雅一, ITmedia]

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