世界で最も厳しいハラル認証取得の舞台裏東南アジア発、気になるニッポン企業(1/4 ページ)

» 2015年08月06日 08時00分 公開
[野本響子ITmedia]

東南アジア発、気になるニッポン企業:

 いま、東南アジアが元気だ。かつては人件費の安さを背景に進出する製造業が中心だったが、現在では旺盛な個人消費にも注目が集まる。急成長する東南アジアを目指し、進出する日本企業、現地で起業する日本人の数も増え続けているのだ。本連載では、マレーシア在住の著者が、マレーシアを中心にして、東南アジアでローカル向けのユニークな事業を展開している日本企業、日系企業に、その経営戦略と展開計画を聞く。果たして、彼らの戦略は将来の日本にどのような影響を与えるのか。


アクアグリーンテックの製品「ECOPIKA(エコピカ)」。JAKIMハラル認証を取得した

 ハラルビジネスに注目が集まっている。イスラム教徒は世界人口の約4分の1を占め、2030年には20億人を突破すると言われているので、日本でも訪日観光客のためのハラルビジネスが盛んになってきた。

 ハラルとは、イスラム法(シャリア)において「合法」を意味するものだ。食品だけではなく、化粧品、医療品も対象となる。「ハラル認証」とひとことで言っても、いろいろな種類がある。各国または各国内の主要なイスラム団体がハラルに関わる認証制度をそれぞれ持っており、基準・制度、認証の位置付けは、団体により異なるのだ。なかでもマレーシアの政府機関であるJAKIM(マレーシアハラル認証局)のハラル認証は厳しさに定評がある。どのくらい厳しいのか。JAKIMのハラルを洗浄除菌水分野で、日系企業で初めて取得したアクアグリーンテックに、その舞台裏について聞いてみた。

 同社の商品「エコピカ」は室内やお風呂、工場などの洗浄に使えるクリーナー。2014年、洗浄除菌水分野でJAKIMのハラル認証を取得した。製品は水を特殊加工したもので、原材料は「水」と「炭酸カリウム」だけ。「原材料の99.5%が水で、アルコールも使っていないので、当初は『JAKIMハラル認証を簡単に取れるのではないか』と考えていました」と同社の冨田佳之社長は話す。単純な製品に見えるが、実際の道のりはどうだったのか。

 アクアグリーンテックがJAKIMハラル取得のために準備を始めたのは2013年11月のこと。前述したとおり、洗浄水の原料は水と炭酸カリウムのみ。水はマレーシアの水道水なので問題ない。そこで炭酸カリウムでハラルに対応した製品を探すことになった。ところが、炭酸カリウムはマレーシア国内では売っていない。日本では生産しているが、ハラルでないので使えない。「あちこち探し回ったところ、タイでハラルに対応している商品を見つけました。タイのメーカーに問い合わせ、扱っている業者を教えてもらい輸入しました」(冨田さん)

 2014年2月、工場の選定作業に入る。JAKIMハラルの認証を取るためには、マレーシア国内の認められた工場でつくる必要がある。これは、単にマレーシア国内にあるというだけではダメで、周囲に養豚場がないなど細かい条件を満たさなければならない。

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