世界で最も厳しいハラル認証取得の舞台裏東南アジア発、気になるニッポン企業(4/4 ページ)

» 2015年08月06日 08時00分 公開
[野本響子ITmedia]
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製品をDNAレベルで解析

 認証後も監査が6カ月ごとに来る。スタッフと情報を共有し「ハラルであること」を保たなければならない。どういうことなのか。

 ハラルでは、原材料や製品の保管場所についても規定があり、ノンハラル(ハラルでない)のものと一緒に保管したり運搬してはいけない。また、決めた保管場所から勝手に動かすことも許されない。工場内のレイアウトも勝手に変えてはいけない。そのため、スタッフが製品を扱う際にも細心の注意が必要となる。運搬はハラル認証をとった倉庫会社や運搬会社を使うか、自社便で運ぶ必要がある。原料材料は注文するたびに請求書を保管し、同じ原料を使い続けていることをいつでも証明できるようにする。

工場の床には黄色いラインが引かれており、機械や原料の置き場所が定められている。勝手に変えてはいけない

 工場の機械を清掃する際も決まりがあり、ノンハラルの化学薬品は使えない。管理が悪く異物が混入してしまうと、ハラル認証が取り消しになってしまうこともある。JAKIMには研究機関が併設されており、製品をDNAレベルで解析し、動物由来のDNAが混ざっていないかまで突き止めることができるのだ。

 工場の運営にも注意が必要だ。ムスリムではないスタッフや会社に来るお客さんにも、禁止行為をしないよう徹底しておく必要がある。「例えば、中国人は室内に赤い仏壇を置くことがありますが、これは許されません。日本の神棚も同様です。カツ丼などの弁当、ゼラチンの入ったお菓子を事務所に持ち込んだり、冷蔵庫にビールが入っていることも許されません。工場や隣接する事務所の中にハラルでないものを置いてはいけません」

 アクアグリーンテックは2020年の東京オリンピックまでに、日本やマレーシアでハラル対応の洗浄水を広めていきたいと考えている。

 「現在、マレーシア国内のモスクやスラウ(お祈りのための場所)の多くで、掃除が水のみで行われています。モスクで使う洗剤にハラル対応の商品がなかったためです。

 将来日本においても、増え続けるムスリム観光客に対応した飲食店や店舗が増えてくるでしょう。彼らにとってJAKIMハラルのマークがあることは、大きな安心材料となるはず。日本でもハラル認証団体はありますが、ハラルの倉庫や物流業者などが少ない日本で、どこまで信頼できるハラルができるか疑問です」

 最後に目標を語ってくれた。「日本の空港を清掃する際に、当社の製品を使ってもらいたいですね。2020年、すべての空港で」――。

野本響子氏のプロフィール:

 東京都立青山高校、早稲田大学法学部卒業。安田火災海上保険(現損保ジャパン)を経てアスキー入社。「MacPower」(アスキー)「ASAHIパソコン」「アサヒカメラ」(朝日新聞出版)の編集者を経て現在フリー。『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」する』(松井博著/アスキー新書)編集。著書に『いいね! フェイスブック』(朝日新聞出版)『マレーシアの学校の○と×アジア子連れ教育移住の第一歩』(Kindle)ほか。現在KL郊外に長期滞在中。マレーシアの教育事情などを書いたブログを更新中。


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