地方の広告業界の迷走と堕落福岡(3/4 ページ)

» 2015年08月17日 10時40分 公開
[中村修治INSIGHT NOW!]
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答えがないから極論を選択する!

 作家である町田康氏は、講演会で「ここ数年、人間の種類が減ってきている気がする」「“いろんな人がいる”ということを許せない人が増えて、多様な人間観が排除されている」という言葉を残している。

 叩く側か叩かれる側か。自民か反自民か。原発には賛成か反対か。その極論の戦いを煽った方がマスコミは視聴率がとれる。発行部数が伸びる。そうやって正しい思考は奪われていく。

 広告の世界も同じである。広告で成果を出すことは難しい。なんかよく分からなくなってきた。その答えとして極論なわけである。目立つことが広告よね。認知を上げることが広告よね。申し訳ないが、それは、脳みその堕落である。

 戦略とは「戦い」を「略す」ことである。大衆とは、右でも左でもない。極論を自ら発することができないのが多くの消費者である。「戦い」を「略す」ためには、そのグレーである消費者の機微を掬い取りファンにしていく戦略が必要なわけである。極論に、戦略はない。誘導である。無駄な闘いである。

 クライアントの皆様も、広告代理店のみんなも、グレーを選ぶ正しい理屈と勇気を持たないから……極論ばかりのダサい広告が採択されるわけである。びっくり過ぎるくらいリアリティがなさすぎる。時代錯誤である。エアポケットになっている。

優秀な若い人材が入ってこないのは当たり前!

 福岡の広告業界の社長さんたちとの最近の話題は「良い若手が入ってこない」「若い人材が育たない」そんなことばかりである。しかしである、こんなダサい広告を出し続けている福岡の広告業界に、優秀な人材がとどまるとは、やっぱり思えない。福岡の広告業界を我が物顔で闊歩するオッサン達にリアリティがなさすぎるのである。自業自得である。

 ワタシがこの業界に足を踏み入れた1980年代後半は、マス4媒体の広告費シェアは、80%を超えていた。それが今や40%台である。広告は文化である。広告は煽動である。広告にそんなファンタジーを描いてきたロートルの出る幕は、もうない。決裁はしてもいいが、その広告の良し悪しを判断し選択する側にまわるべきではない。往生際が悪いのである。

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