1990年代の後半、日本ではこんなテレビCMが流行した。CMの最後に「つづきはWebで」という文言。そーいえば、そんな広告あったなあ、と思い出した人も多いだろう。しかし、海外の広告事情に詳しい人は知っていた。「つづきはWebで」という文言は、日本で放送される数年前に海外では当たり前のように流れていたことを。
ということは、いま海外で展開されている広告は、数年後に日本にやって来るかもしれない。どんな広告が、世界で流行しているのだろうか。そこで広告事情に詳しい、元『広告批評』編集長の河尻亨一さんに、現在注目されている広告についてうかがった。聞き手は、Business Media 誠編集部の土肥義則。全3回でお送りする。
銀河ライター主宰、東北芸工大客員教授、元『広告批評』編集長など。
1974年生まれ、大阪市出身。早稲田大学政治経済学部卒業。雑誌『広告批評』在籍中には、広告を中心にファッションや映画、写真、漫画、Web、デザイン、エコなど多様なカルチャー領域とメディア、社会事象を横断するさまざまな特集企画を手がけた。
現在は雑誌・書籍・Webサイトの編集から、企業の戦略立案およびPRコンテンツの企画・制作まで、「編集」「ジャーナリズム」「広告」の垣根を超えた活動を行う。カンヌ国際クリエイティブフェスは2007年、08年、10年、11年、12年、13年に参加している。
河尻:ドイさんは広告を見るとき、どういったところに注目されますか?
土肥:そうですねえ……商品であれば「お! これ欲しいなあ」と思ったり、ちょっと変わったコピーがあったら「これ、面白いなあ」と思ったり。あっ、めちゃめちゃ普通ですね(苦笑)。
河尻:いえ、多くの人はそういう見方をしているでしょう。でも広告は「時代を反映している」という側面があるんですよ。
広告というのは、ものすごくシビアな世界。競合企業がひしめき合う中で、自分たちの存在感を打ち出して、きっちり商品の存在をお客さんに知らせなければいけません。広告の中に敏感なコミュニケーションを詰め込んでいかないと、それを見ている人の心には響きません。
心に響かないということは、結局のところ、その企業は古臭く見えたり、イケてない感じに見えたりするんですよ。そして、そのイケてない感じが積もり積もると、その企業の信用などが損なわれ、ビジネスを円滑に行うことが難しくなっていく。
広告の制作サイドで「いまの時代はこうだ。だからこういう広告をつくろう」といった人はあまりいないでしょう。でも10年以上にもわたってたくさんの広告をウオッチしていると、「あー、いまってこういう時代なんだなあ」ということが、おぼろげながら見えてくるんですよね。
土肥:ほー。で、どんなことが見えてきたのでしょうか?
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