「安保反対デモ参加者は頭が悪くて仕事ができない」は本当かスピン経済の歩き方(3/5 ページ)

» 2015年08月18日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

降伏したほうがいい場合もある

 この時代の社会党は「自衛隊は憲法違反」を譲らず、長期目標として「非武装宣言、自衛隊解体」を掲げ、丸腰になれば世界平和が実現されると訴えていた。そのロジックをまとめたのが石橋さんである。そんな人なのである意味一本筋が通っていた。「理念としては分かるが現実問題として外敵が来たらどうする」という今もよくなされる「脅威論」をふっかけられても、「降伏したほうがいい場合もある」なんて胸を張って答えたものだ。

 「ネトウヨ」のみなさんが聞いたら怒り狂いそうな話だが、1980年代の日本ではそれなりにウケて『非武装中立論』は30万部超えのベストセラーになり若者たちがむさぼり読んだ。国士館大学政教研究所が首都圏の私大生約1000人に「日本の安全を保障する具体的な手段」を質問したら、日米安保、武装中立、日ソ善隣体制を抜いて、「非武装中立」が38%と最も多かったという。

 なぜ『非武装中立論』はこんなにも若者たちの支持を得たのか。それを理解するのは、自民党幹事長を務めた田中六助氏がかつて漏らした愚痴が分かりやすい。

 「憲法を字づら通り解釈するなら、社会党の言うほうが正しいに決まっている。だが、世界の情勢を考えるなら、そうだなどと言ってはいられないから、苦労しているんじゃないか」

 しかし、「正論」を主張をしていた社会党は衰退していく。「間違った理論に固執」して現実に対処できなかったからだ。

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