“ロボット大国”日本は、なぜ「手術支援ロボット」市場で勝てないのか消費トレンドから見る企業戦略の読み解き方(3/7 ページ)

» 2015年08月27日 09時00分 公開

 手術支援ロボットにはメリットが多い。人間の手よりも細かい動きができるほか、切開部を最小限に抑えられるため、出血量も少なく、合併症のリスクも抑えられる。短い期間で“熟練の技”を実現できるため、医師のスキルの平準化にも役立つ。労働力あたりの価値を高めていく必要のある高齢先進国の日本にとって、極めて重要な製品だ。

photo ダ・ヴィンチを用いた手術の様子

 また、医療機関が手術支援ロボットを導入すれば地方紙でニュースになるなど、「先端医療ができるかどうか」を判断する1つの基準にもなりつつある。

 すでに米国では前立腺全摘術の8割で利用されており、非常にポピュラーな存在だ。日本でも、タレントの稲川淳二さんが、前立腺がんの治療に用いたことで話題になった。

 最大のシェアを誇るISの「ダ・ヴィンチ」は、世界で約3100台(2014年6月時点)が設置されている。

ダ・ヴィンチに独占される市場

 手術支援ロボット市場は、ISによる事実上の独占体制にある。独占市場のため、コストが高い。本体価格は、14年10月に従来比で25%の値下げを行ったが、円安の結果、円ベースでは実質的な値上げとなった。例えば、4本のアームを備える「ダ・ヴィンチ サージカルシステムSi」は2億4800万円(税別)もする。

 本体価格だけではない。10回の使用制限がついた専用の鉗子が1本約40万円するほか、年間メンテナンス費用も約2500万円かかる。前立腺がんなど保険適用が効く手術なら患者負担は10万円前後だが、自由診療になるその他のがんでは、場合によっては患者負担が数百万円に膨れ上がる。

hpoto 専用の鉗子

 ロボット大国とも言われる日本のメーカーは、なぜ手術支援ロボット市場で存在感を発揮できないのか。

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