最後の夜行急行「はまなす」廃止でどうなる?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/4 ページ)

» 2015年09月11日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

はまなすの実用性

 はまなすは観光列車としての要素は少ない。むしろ実用的な列車として人気がある。前述の札幌駅の光景、私が乗った2015年2月25日の青森行はまなすも鉄道ファンの姿は少なく、一般観光客や用向き姿の乗客が多かった。「札幌〜青森間の移動を夜間に」が人気の理由だから、ほかの夜行列車のように他区間に振り向けても意味がない。青函トンネルが使えないと終わりである。

カーペットカーは窓配置に特徴がある カーペットカーは窓配置に特徴がある
カーペットカーの車内。少ない2階席のほうが人気 カーペットカーの車内。少ない2階席のほうが人気

 札幌発はまなすの実用性は、青森着5時39分というダイヤにある。私が乗車したとき、青森駅で降りたお客さんのほとんどが5時43分発の秋田行特急「つがる2号」に乗り換えた。これに乗ると秋田着は8時22分。1日を始めるに当たって都合のいい時間帯である。札幌で1日の活動を終えて、翌日、秋田で活動できる。夜間を寝ながら移動すれば都合がいい。

 つがる2号に乗ったお客さんの中には、隣の新青森駅で降りた人もいた。青森駅と新青森駅を利用する場合は特急券不要という特例がある。これは東北新幹線に乗り換える便宜を図った制度だ。つがる2号の新青森駅到着は5時48分。慌ててつがる2号に乗らなくても、青森駅6時発の普通列車に乗れば新青森駅着6時4分。東北新幹線の始発列車、新青森駅6時17分発の「はやぶさ4号」に間に合う。東京着は9時23分。何と秋田着と1時間くらいしか変わらない。

 逆方向の札幌行はまなすはどうか。青森発22時18分、札幌着6時7分。このダイヤは、秋田発19時27分の「つがる9号」、東京発18時20分の「はやぶさ31号」と連絡する。札幌から先に乗り継げば、旭川に8時16分、帯広に9時25分に着く。現地で早朝から活動したい、しかし羽田空港から遠くて始発便に乗れない、という人にも便利だ。

 つまり、はまなす自体は札幌〜青森間の夜行列車だけど、用途としては札幌〜秋田、札幌〜東京間を結ぶ実用的な移動手段である。この列車を失うには惜しい。車両の老朽化を解決できるなら、座席車だけでもいいから残したい。例えば、まだ使える気動車で運行する。青函トンネル内はエンジンを動かせないから機関車に引っ張らせる。この方式は過去に実績がある。

 寝台の方が快適だけど、営業的には寝台車よりも座席車の方が乗客数を増やせるから都合がいいはずだ。津軽海峡は道路がないから、夜行バスというライバルもない。鉄道が勝てる区間である。

 北海道新聞によると青森行はまなすは本州連絡だけではなく、西胆振方面への最終列車の役割もあったという。西胆振は北海道の南西部、室蘭あたりだ。確かにはまなすは登別発23時55分、東室蘭着23時50分、伊達紋別0時17分で、最終列車として都合のいい時間帯だ。普通車自由席の連結は、西胆振方面最終列車を考慮したと言えそうだ。

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