最後の夜行急行「はまなす」廃止でどうなる?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/4 ページ)

» 2015年09月11日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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「札幌〜函館間夜行」の復活を

青森〜秋田間の特急「つがる」に使用されている電車(写真は2010年当時、八戸〜青森間の運行時代) 青森〜秋田間の特急「つがる」に使用されている電車(写真は2010年当時、八戸〜青森間の運行時代)

 しかし、はまなす廃止の不便を嘆くは早計だ。きっとJR北海道は「札幌からの新幹線連絡」「西胆振最終列車」の意味を分かっていて、代案を用意するに違いない。北海道新幹線に接続するため、新函館北斗・函館と札幌を結ぶ夜行列車が運行されると便利だ。

 はまなすが誕生した1988年の夏から2002年秋まで、札幌〜函館間の夜行快速列車「ミッドナイト」があった。気動車で寝台車はなかったけれど、カーペットカーに改造した車両を連結していた。札幌発23時30分、函館着6時30分、逆方向も函館発23時30分、札幌着6時30分だった。

 このダイヤをアレンジして、新函館北斗駅始発/終着着のはやぶさに接続させる。そのくらいのことはやるだろう。これなら西胆振最終便の役目も持たせられる。さすがに普通乗車券のみの快速にはならず、はまなすとして残すか、特急に格上げして増収を図るかもしれない。

 北海道新幹線の詳細なダイヤは9月16日に発表予定と報じられている。所要時間は4時間強とのことだ。仮に新函館北斗駅を6時ちょうどに出発するとして、東京着は10時を過ぎる。これはちょっと惜しい。札幌発で羽田空港に10時までに到着する航空便は10本以上ある。それでも東北各地域、北関東へは便利だ。はやぶさは宇都宮に停車せず、北海道新幹線開業後も宇都宮を通過するという。けれども、札幌からの連絡という意味では、早朝の新函館北斗発、最終の新函館北斗行、せめてこの1往復は宇都宮に停めたほうが良いと思う。

 新青森乗り換えの秋田着も1時間遅くなりそうだけど、9時台なら許容範囲だろう。札幌〜秋田間の航空便は始発が遅いから競争力がある。航空会社は新幹線影響を見越して、秋田便の札幌発着を繰り上げるチャンスかもしれない。

 札幌〜函館間にはバスの便もある。「高速はこだて号」の札幌発は23時35分、函館駅着は5時5分。途中の七飯町は4時20分着で、七飯町バス停から新函館北斗駅は近いから、バス会社は経由変更を検討しているはずだ。このバスは片道4810円。鉄道は乗車券が5720円、指定席特急料金を含めると8830円(通常期)。料金では対抗しにくいから、座席をよくしたり、乗り換えに便利なダイヤにしたりという工夫が必要だろう。

 はまなすの廃止は鉄道ファンとしても残念だ。しかし、この列車は旅情を求めるよりも実用性を重視した列車である。不便を嘆くにはまだ早い。毎年春のJRグループダイヤ改正は、慣例では前年12月20日ごろに公式発表される。北海道新幹線に接続する函館〜札幌間のダイヤ発表を、新しい定期夜行列車の誕生を期待しつつ待ちたい。

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