都営交通から全国へ広めたい“ヘルプマーク”に足りないこと杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/5 ページ)

» 2015年10月30日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

厚生労働省が拾い上げて全国区にすべき

 なぜヘルプマークの周知が進まないか。その理由は2つある。1つは、東京都だけの活動、都営交通の配布だけで閉じているから。もう1つは、ヘルプマークの思いが一方通行だから。

 ヘルプマークは東京都が制定、配布している。既に3年間も使われている。しかし、認知度は低いと思う。私が知らないだけだろうか。前述の人工関節利用者の友人は私より少し年配だ。白血病を患ったけれど骨髄移植で完全寛解。しかし副作用で人工関節になった。ときどき杖を突いている。外観では不自由な人に見えない。ステッキを持ったオシャレな御仁である。彼は当事者だからヘルプマークの情報をキャッチできた。

 ヘルプマークの制度はとても良い。しかし運用と周知の範囲が狭すぎる。これではヘルプマーク保持者の期待が、都営交通以外の場所で通用しない。事実、ヘルプマーク保持者と鉄道の現場ではトラブルもある。ネットで検索すると、大手私鉄の乗務員とヘルプマーク保持者の騒動が出てくる。周知されてない乗務員にとっては気の毒だし、ヘルプマーク保持者も都営地下鉄だけの周知とは知らないのだろう。怒り心頭で罵声を上げるなどひどい有様だ。

 ヘルプマークは都営地下鉄と同業の東京メトロも実施すべきだし、JR東日本、関東大手私鉄も取り組まなければ、東京全体、首都圏に周知されない。東京都はヘルプマークについて民間企業へも賛同を求めている。ルールに則ればポスターなどを自主的に制作できる。東京メトロも大手私鉄もなぜ採用していないか。いったい民鉄協は何をしているのか。こういう制度を検討する場ではないのか。

 37社が携帯電話マナーの変更を一斉にできた。同時にヘルプマークを採用してくれたら良かった。惜しい。しかし悔いているだけでは済まない。同じ周知をもう一度やればいい。最善の方法は、マタニティマークと同じく、厚生労働省が拾い上げ、全国的な制度への格上げする。ヘルプマークと同様の制度は日本各地で始まっている。どれも賛同できるけれど、やはり運用が地域的、限定的だ。これでは、出掛けるたびに、その地域のヘルプマークが必要になる。それぞれは継続して良い、統合しようとは言わない。けれども、何かひとつ、国民の共通意識のシンボルがほしい。

ガイドラインを順守すれば、ポスター、グッズなどを自由に制作できる。東京都は事前に所定の書式による報告を求めている(出典:東京都「ヘルプマーク作成・活用ガイドライン」) ガイドラインを順守すれば、ポスター、グッズなどを自由に制作できる。東京都は事前に所定の書式による報告を求めている(出典:東京都「ヘルプマーク作成・活用ガイドライン」

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