私の慢心を打ち砕いたベンチャーコンテスト LaunchPadへの挑戦経沢香保子の「ベンチャー魂は消えない」(3/8 ページ)

» 2015年11月25日 08時00分 公開
[経沢香保子ITmedia]

予選での恥ずかしいほど拙いプレゼン

 とはいえ、最初はスタッフがエントリーシートを書いて、書類審査が通ったなどと報告してくれた。「へー、さすが○○さん!」などと喜んでいたが、そのときは、プレゼンを舞台上でするのは私なのに、LaunchPadの本当の大変さがよく理解できなかった。

 ところが、である。いざ事前の面接会場に行くと、審査員が3人待ち構えていて、本能的に「これはやばいな」と感じた。普段使うようなパワーポイントの資料を使って6分間プレゼンをしたけど、審査員にはまったく伝わらなかったのだ。

 「料金が安いのは分かったけど、それは何でなの?」

 「UI(ユーザーインタフェース)がよく分からない」

 かつて上場企業の社長として何度かIR発表をしたこともあったし、私自身はプレゼンが上手な方ではないかと思っていた。ところが、見事なまでの玉砕である。

 「どうしてこんなにいいサービスなのに分からないのだろう。しかも、審査員の人たちも子どもがいるのに……」

 しばらくして、伝わらない根本の原因にハッと気付いた。予選審査会場では他のスタートアップ企業の若手経営者たちが必死な思いでプレゼンしている。彼らに比べて私はどうなのだろうか。

 2回目の起業とはいえ、事業というのはいつもゼロスタート。スタートアップで本当に頑張っている人たちと戦わなくてはいけないのに、私はどこか小綺麗に小さくまとまってはいたのかもしれない。1度目の起業では、あんなになりふり構わず目標に向かって突っ走って、いくつもの難関をまるで奇跡のようにぎりぎりのところをすり抜けて生き延びたのに。

 経験も実績も何もないのに、新しい障害物が、暗闇のトンネルの中に現れ続ける日々。へたくそな素人技でも格闘して、拙くてもいつも情熱的で、ずっと先に一筋の光を見つけ、それに向かって使命感だけで突破し続けていたのだ。

 自分がなぜイマイチなのか考えていくうちに、だんだん恥ずかしくなってきた。プレゼンが下手なのも考えがまとまってないからだし、いいものを作っているから皆分かってくれるだろうという、どこか奢りがあったのかもしれない。

 今の私は、本当に100パーセント魂を注入しているのかというのをものすごく問われた気がした。

 社長が命を懸けてやらないと、社員のつま先まで思いが浸透するはずない。一流のチームを作りたかったら、社長が徹底的にDNAを注入するのは当たり前なのに。しかも、今度は「日本の育児のあり方を変えたい」「キッズラインを社会のインフラにするまでやる」そんな壮大な目標に挑戦してるのだ。もっと発言し、もっと現場にも入り、どんどん表にも出て行こう。

 このときから、本当の意味で「Launch Padの優勝」を目指してスイッチが入った。何よりも私自身が変わり始めたと思う。

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