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» 2015年12月01日 08時00分 公開

スピン経済の歩き方:CIAの“サボりマニュアル”は、なぜ「日本企業あるある」なのか (4/4)

[窪田順生,ITmedia]
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戦時中の体制をそのまま引きずる

 今の「日本企業」「日本的経営」というと多くの人は、「三丁目の夕日」的な高度経済成長の時代に確立されたと思いがちだが、そんなことはない。そのルーツは、以前のコラムでも述べたが、戦時中のソ連の計画経済を意識した国家総動員体制である(関連記事)。これよって日本企業と日本経済は、政府が全主要産業を統制下に置く全体主義的な体制となったのだ。

 こういうことを言うと「こいつは反戦サヨクだ」とか「祖父母の世代をバカにするのか」とか激しいバッシングに晒(さらさ)されるので、社会的立場のある方なんかは薄々勘付いていても黙っているものだが、なかには毅然とした態度でこの問題を指摘される方もいる。例えば、シティグループ証券の藤田勉取締役副会長はこのようにおっしゃっている。

 戦時体制の影響は、今もなお、広範囲に残っている。所得税の源泉徴収、地方交付税、国民皆保険、厚生年金、9電力体制、経団連、新幹線も、戦時中にその原型ができた。同様に、年功序列、終身雇用制、系列・下請、メインバンク、天下り、行政指導のルーツは、すべて戦時体制である。戦後できた日本的経営の要因は、株主持合いのみである。それほど、戦時体制を出発点とする日本的経営は根が深いのである。(月刊資本市場 2015年5月)

 世界に誇るような技術力や経済力をもち、勤勉な労働者がこれだけたくさんいるにもかかわらず、日本の労働生産性は、OECD加盟国34カ国のなかで20位。先進国のなかでは最下位だ。これは「最近の若いモンは死にものぐるいで働いていない」とかいう精神論や、「一億総活躍」なんて戦時中みたいなスローガンで解決できるものではない。日本社会がいまだにひきずっている戦時中のシステムを断ち切るしかないのだ。

 効率の良さをあまりに追求してしまうと、仕事を失う人たち、困る人たちがたくさんいるという意見もあるかもしれないが、それこそが戦時中の「国家総動員体制」からいまだにわれわれが脱却できていないということではないのか。

 安倍さんは「戦後レジームからの脱却」を掲げているが、実は脱却しなければいけないのは「戦時レジーム」である。

 70年前に徹底的に日本のアラ探しをしたOSSが作成した「サボりマニュアル」は多くの問題をわれわれに突きつけている。

脱却しなければいけないのは「戦時レジーム」ではないか(写真はイメージです)

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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