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» 2015年12月03日 08時30分 公開

政策の大転換期を迎えた:エネルギー・シフトが及ぼす各業界へのインパクト (2/5)

[Strategy& ]
プライスウォーターハウスクーパース・ストラテジー株式会社

エネルギーが密接にかかわる企業の戦略

交通・運輸

 自動車業界では、エネルギー価格、つまり原油価格が下がっていることで、最大のマーケットの1つである米国でエコカーブームが薄れ、元々、人気のある大型車の需要が増えている。これが今、世界の自動車業界全体の利益の多くを支えている。

 この瞬間で見ると、エコカーに対する需要という意味ではブレーキがかかった形になっているが、CO2削減という観点から見れば、車に対する燃費規制は当然強まっていく。日本で車の燃費が向上し、ガソリンスタンドが減ったことからも現れているように、燃費規制が強まれば、エネルギーの需要が小さくなる。世界中で車の燃費は10年前と比べ20%以上向上している。

 日本で運輸セクターは原油の主な用途のうちの4割ほどを占めているが、その需要は車の台数が増加しない限り燃費の向上に合わせて低下する。よって運輸部門に対するCO2対策ではまずは燃費規制が強まり、合わせて電動化が進んでいく流れになることが想定される。米国でも欧州でも、今後10年間で燃費をさらに向上させる動きがあり、その改善ができない企業には罰金を科すことすらある。今後新興国でも環境規制が加わると同様の動きが生じ、全世界的に車の燃費の向上が進んでいく。加えて車の総数は、2020年には頭打ちになり、増えなくなると言われている。

図表1 多方面にわたる変革の可能性 図表1 多方面にわたる変革の可能性

 エアライン産業は、コストに占める燃料代の割合が多いため、燃料価格の下落を鑑みると、確実に利益が増えると言っても過言ではないだろう。よって今のエネルギー価格が続くと、エアラインは大きく発展すると考えられる。現在のエネルギー価格を考えると、同様の構造を有するあらゆる産業に言えることである。

 船は環境規制により、燃料や技術革新に変化が表れてきている。車は使うのは平均10年ほどであり、飛行機は機体そのものは20〜30年、エンジンを交換しながら使うが、船の場合はエンジンも含めて20年以上使う。船が基本的に休みなく24時間運航することを考えると、非常に長い時間である。

 船は公海上、規制のないところで航行するため、燃費規制や排出ガス規制が困難であった。船籍は、船にかける税金の安い国にすることが多く、船に投資をする船主がいる場所とは異なることが多い。そのような中で徐々にオペレーターの側から、環境対策のために排出ガスや燃費規制を入れよう、という機運が高まってきている。船は重油を原料にディーゼルエンジンで動いているものが多かったが、重油は排ガスの問題やCO2規制もあるため、クリーンさやCO2の問題と長期にわたり安定的に安く手に入るというコストの点から、LNG燃料への舵を切っている。船のエンジンにかかわる企業はLNG燃料への対応をする必要があり、新技術への対応が勝ち残りのカギを握る。

 一方で、中国が造船の生産キャパシティを増加してきたために需要を超える生産能力があり、今後もインドやブラジルといった新興国の増産計画によりさらなる生産キャパシティの増加が想定され、コスト面で中国や韓国勢に勝つことが難しい状況になっていることから、新技術への対応による対策が重要な意味を持つ。

 これらのことは何を意味するのか、昨年来大きく価格を下げた原油相場については、さまざまな見方がされているが、上記のような状況から筆者は今後の原油価格の上昇には悲観的である。中東情勢はさらなる混迷を深めているが、そもそも世界の原油生産に占める中東地区の割合が小さくなってきている。原油価格の長期低迷は、ほかの産業にはコストの低下という恩恵以外にも、次で論じるようなさらなる変化をもたらすであろう。

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