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» 2015年12月03日 08時30分 公開

政策の大転換期を迎えた:エネルギー・シフトが及ぼす各業界へのインパクト (3/5)

[Strategy& ]
プライスウォーターハウスクーパース・ストラテジー株式会社

製造業や素材産業

 エネルギーを使う産業やエネルギーを原材料とする業界の、エネルギーにかかるビジネスチャンスについて考えてみたい。こうした産業にとって、エネルギーは生産や物流にかかわる必要不可欠なコストであり、それを抑えることは競争力に直結する大変重要な問題である。原発の問題や原料価格の高騰で、エネルギーコストが大きな負荷としてのしかかってくる。グローバルで見ると、エネルギーの地域的な違いが顕著に現れてきており、エネルギーの観点から生産拠点の立地を検討することも、製造業の競争力に影響を及ぼし得る。

 また日本はエネルギーとしての電力が、他国に比べ割高である。電力を何で作るかは、価格を左右する重要な点である。現在、日本の電源の主流はLNGを燃料とする火力発電である。日本ではLNGによる発電コストが国の試算によると約13円/kwh。一方、世界の最先端の太陽光発電のコストは5〜10円/kwhまで下がっている。

 日本の太陽光発電コストはそれに比べるとまだまだ高く、国の試算によると30円/kwhである。これはパネルの価格ではなく、設置側のコストによる。極端な例では米国、テキサスでは4セント/kwh程度で、再生可能エネルギーがLNGより安価に発電できるまでになっているのである。価格は普及に大きなドライバーとなるため、本来は再生可能エネルギーが安価で手に入らないとCO2の排出量は減らない。原発がここまで普及してきたのは過去に費用が安いと考えられていたためである。

 いまだ世界は原発が発電の主流であるが、安全性の面から真剣に原発を廃止することになれば、CO2排出削減の点でもほかの電源の選択肢としては、再生可能エネルギーが有力な選択肢とならざるを得ない。

 このように電源が多様化してくることにより、電気がどこで作られるか、エネルギーはどこで余るのか、国や地域ごとに大きな差異が生じる。エネルギーは運ぶのに大きな投資が必要で高いコストがかかるため、特にエネルギー使用や素材としてのエネルギーがコストの大部分を占める企業は、エネルギーが安価な土地に生産拠点を移し、価値の高いものに変換することで競争力を高める企業も出てくる。

 例えば、米国でのシェールガス革命により、安い原料が手に入ることで、世界の化学産業が米国に立地しようと動いたのはまさにこの動機である。また、石油化学業界では「石油」というエネルギーを原材料にして、さまざまな商品を作っていたが、実はガスも原材料に使えるものもあり、ガスが安く手に入るところに立地しようという動きが起こっている、という具合である。

 これらにより、今まで「エネルギーを単純に作って売る」のみで産業が成り立っていた国は、今後の経済回復に長い年月が必要であることが予想される。エネルギーが安く採れる国では、従来のようにエネルギーをそのまま海外に輸出するのではなく、それを原材料にして何か付加価値のあるものを製造することで産業の育成を図り、国の発展につなげていくことが必要になるだろう。

 また、再生可能エネルギーを産業の梃にしようと荒野や僻地に風力発電所を設置するだけでは、十分な需要は見込めず、作ったエネルギーをそのまま捨てることになりかねない。作り出したエネルギーを蓄積し別の製品に変換し、世界各地の消費拠点へ運搬する仕組みを産むことが不可欠である。エネルギーを水素など「貯めて運べるもの」に転換し、それにかかわる新しい産業エコシステムを構築することが重要である

 ロシアや北アフリカ諸国のような国々が、1次エネルギー産業中心の経済から、電気を水素に変換して輸出するような3次エネルギー産業の育成や、安くできる電気を使い水など社会で必要不可欠なものに変換するような産業の育成を通じて、安定的な経済発展を目指すことは、世界の秩序と政治的安定のためにも不可欠ではないだろうか。そこには技術と資本を海外から導入するインセンティブも含めて、新たな事業機会が生み出されてくるであろう。

 一方でエネルギー意識の高まった最終消費者は、その商品が作られて手元に届くまでにどのようなエネルギーが使用されたのかに強く関心を持つようになる。その結果、企業は自社が選択したエネルギーが、最終消費者にとってはその商品やブランドのイメージにも直結し得る、というマーケティング面にまで影響を及ぼすことまで考えなければならない。

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