「ガソリンが下落すれば、回転ずし屋の客が増える」は本当かスピン経済の歩き方(4/5 ページ)

» 2016年02月09日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

日本が世界第二位の経済大国になった理由

デービッド・アトキンソン氏の『新・観光立国論』(東洋経済新報社)

 トヨタ、ホンダ、ナショナル……日本がここまでの成長を果たしたのは、他国には真似できない「メイド・イン・ジャパン」が世界市場を席巻したからだというのは、多くの日本人が「常識」として受け取っている。

 なぜか。メディアが高度経済成長期における技術力をもつメーカーの拡大成長と、GDP成長をリンクさせて報道したからだ。

 が、これも先ほどの「回転ずしとガソリン」と同様に、そんなシンプルな話ではない。日本企業の輸出産業が経済に大きな影響を果たしているのは事実だが、GDPは日本経済のほんの一握りしかない大企業だけで形づくられるものではなく、人口と大きな因果関係がある。

 つまり、日本の経済成長をグラフにした場合、真にリンクしているのは「技術力」などという曖昧(あいまい)なものではなく、戦後から爆発的に増え、1965年ごろには1億人を突破した「人口」によるところが大きいのである。このあたりは、本コラムでも何度か紹介したデービッド・アトキンソン氏の『新・観光立国論』(東洋経済新報社)に詳しく解説されているので、興味のある方はぜひ読んでいただきたい。

 ガソリン下落で回転ずし屋がウハウハくらいならば平和な話だし、外食産業を元気づけることもできる。消費マインドを刺激するという効果もあるかもしれない。「日本が世界第二位の経済大国になったのは、技術が優れていたから」という報道が及ぼす弊害は計り知れない。

 まず、大企業の経営が傲慢となる。「技術さえあれば、なんでも許される」という奢(おご)りが生まれ、足元がボロボロになっていても現実を受け入れることができない。今の東芝がその典型だ。

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