“昔ながらの喫茶店”でも国内3強に成長できた理由とは?高井尚之が探るヒットの裏側(1/3 ページ)

» 2016年02月29日 08時00分 公開
[高井尚之ITmedia]

高井 尚之(たかい・なおゆき/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)

日本実業出版社の編集者、花王の情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。

「カフェと日本人」(講談社現代新書)「セシルマクビー 感性の方程式」(日本実業出版社)「『解』は己の中にあり」(講談社)「なぜ『高くても売れる』のか」(文藝春秋)「日本カフェ興亡記」(日本経済新聞出版社)など著書多数。 E-Mail:takai.n.k2@gmail.com


 日本国内に667店(2016年1月末時点)ものカフェを展開する「コメダ珈琲店」。同店を運営するコメダの経営が、2008年に創業家からファンド系に移ったことは、ビジネス業界ではよく知られている。現在、同社の全株式はアジア系ファンドのMBKパートナーズが持ち、年内の株式上場を目指している。

 前回に引き続き、コメダ珈琲店の成長の裏側を探る。今回はコメダがこだわる流儀と現経営者の横顔を中心に読み解く。

photo コメダのモーニングセット

コメダのこだわり

 コメダがユニークなのは、「街の喫茶店」テイストのまま、国内3強に成長したことだ。もともと1968年に加藤太郎氏が個人喫茶店として名古屋市西区で開業した。店名の由来は、生家が米屋だったので「父への尊敬の思いを店の名前に込めた」という。

 70年代からボランタリーチェーン(VC)を展開してきたが、喫茶王国といわれる愛知県では目立たず「ご近所の人が通う喫茶店」というべき存在だった。

 変化のきっかけは1977年だ。加藤氏は他店舗との差別化のために、「一戸建ての店舗に駐車場を完備」「年中無休で長時間営業」「コーヒーの味は均一にする」の3つを運営方針に定めた。また、現在のコメダの象徴ともいえるログハウス風の建物や、黒地にオレンジ看板の色づかい、「モーニングサービス」もこれ以降に構築されていった。

 なお、さまざまなフードメニューがそろうコメダを「総合型の喫茶店」と説明する業界関係者もいるが、実はカツサンドやハンバーガーなどパンメニューが中心。ごはん系は置いていない。パンは自社工場でつくり、できたてを提供することにこだわる。分量が多いのも特徴だ。コーヒーは専用工場で抽出してリキッド状態にしたものを毎日各店舗に配送。これを店舗で加熱する。加藤氏が定めた「コーヒーの味は均一に」を守るためだ。コーヒーとフードメニューを注文すると1000円前後するが、商品の評判はよく、客足が途絶えなくなった。

 首都圏には2003年に進出し、当初は横浜市郊外で地道に店を展開していた。新たなターニングポイントとなったのが2008年。太郎氏には息子もいるが跡を継がせず、同年に国内系投資ファンドのアドバンテッジパートナーズに全株式を売却。2013年に同ファンドらがアジア系のMBKパートナーズに全株を転売した。ここから成長に拍車がかかる。

photo 「コメダ珈琲店」
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