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» 2016年03月07日 08時00分 公開

池田直渡「週刊モータージャーナル」:一周して最先端、オートマにはないMT車の“超”可能性 (4/4)

[池田直渡,ITmedia]
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 また、MTの問題点の解決に向けた開発も進んでいる。例えば、現在のような電制スロットルの時代になると、MTの宿命であったエンストを防止することも可能になってくる。エンジン回転が下がりすぎたとき、電制スロットルが介入して、エンジントルクを増やすということは、制御としてはもう難しいことでも何でもない。今の40〜50代がさらに歳をとったとき、そういうアシスト機能は大きな助けになるはずである。

 ATより自分で操作するMTを選ぶ層にとっても、煩わしくないアシストであればあった方が良い。それは既に我々の想像を超えたところまで進んでいるのだ。マツダはMTの自動運転化も視野に入れた研究開発を行っている(関連記事)。普通に聞いたら全くナンセンスな話だ。しかし、そのために出資して東京大学に社会連携講座まで立ち上げたとなると、与太話とは思えない。

 まず第一に「人は誰しもチャレンジすることが楽しい」ということだ。ゲームでもスポーツでもそうだが、あまりに一方的な展開になると人は興味を失う。簡単過ぎても難しすぎても、退屈だったり屈辱的だったりしてやる気になれない。だが、適度な歯ごたえのある攻略対象に向上心を持って臨めるとき、それは興奮の対象になる。米国の心理学者、ミハイ・チクセントミハイはこれを「フロー体験」と名付けた。筆者は日本古来の言葉で言えば「没我の境地」だと思っている。熱中し夢中になるとき、人の心と体は活性化する。それはボケを防止し、豊かな老いの時間を過ごすことを可能にする。筆者が言っているのではない。東京大学の特任准教授がそう言っているのだ。

 ヤマハがMTの自動二輪車を運転することがボケの防止に役立つという発表をしていることを基に、マツダではこれがクルマでも成立すると考えているのだという。ただし、問題なのはチャレンジするのがゲームではなくリアルの世界の運転であることだ。ミスは死亡事故につながる。

 そこで、チャレンジが万一失敗した場合に備えて、バックグラウンドで自動運転が待機するわけである。人為的なミスが事故につながりそうなとき、コンピュータがシークレットサービスのようにアシストして事故を未然に防ぐ。そんなことがどこまで実現できるかについてはまだ議論の余地があるだろうが、クルマを運転する喜びがいくつになっても味わえ、万一の場合にはミスをアシストして助けてくれる仕組みが本当にできたとしたら、人とクルマの新しい関係が生まれる可能性は確かにある。それは世界に対して日本が提唱する自動車の新しい価値になるかもしれない。

 ATのイージードライブが創造してきた価値の延長線上に完全お任せの自動運転があるとしたら、それとは全く異なる自動車の可能性がMTの自動運転の先に見えてきた。それは人が持って生まれた好奇心を大事にするということだ。面白がって難しいことにチャレンジし、そのリスクだけを最先端の自動運転が排除してくれるという全く新しい概念である。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。

 →メールマガジン「モータージャーナル」


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