日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。
先週、経歴詐称で世間を騒がしたビジネスネーム「ショーン・マクアードル川上」こと、川上伸一郎さんを擁護(ようご)する声があがっている。
「世界を股にかけた年商30億円の一流コンサルタント」というふれこみだったが、現実の拠点は恵比寿の雑居ビルやらレンタルオフィス、Webサイトに「共同経営者」として紹介されていた「ジョン・G・マクガバン」なる人物たちもググって出てきたアカの他人……などなど経営コンサルタントとして完全に「アウト」の嘘が次々と露呈している。しかし、テレビやラジオで発言していた内容はしっかりとしていたし、人柄も素晴らしいのだから、ちょっとくらいの嘘は勘弁してやろうよ、みたいなことをおっしゃる方がいるのだ。
その代表が、脳科学者の茂木健一郎さんだ。
自身のブログで「お人柄や、ご発言の的確さなど、素敵だと思いました」と川上さんを絶賛したうえ、経歴詐称についても「学歴や、ハーフや、『ハーバードMBA』といったラベルをありがたがる、世間の価値基準に対する一種の『適応』だという感じ」とかばってみせたのだ。
人は信頼していた者に、「裏の顔」があることを告げられると、なかなか受け入れられない。そこで自分を納得させるため世の中や他人のせいだと考える。我が子の問題を告げられた親が、「うちの子に限って」と現実逃避して、教師やよその子に原因を求めるのはそのためだ。
そういう意味では、茂木さんのおっしゃることは心情的には理解できる。が、川上さんの「詐称」をラベル云々、適応云々という小難しい話にもっていくことにはかなり抵抗がある。
経歴や学歴を偽ることで、自分をより大きくみせ、よりよいポスト、仕事にありつこうというのは古今東西で確認されている現代社会の普遍的なインチキだ。
例えば、米国の調査会社「ハリス・ポール」によれば、履歴書のごまかしを見つけたことがあると回答した採用担当者は全体の48%。学歴詐称が一般的と回答したのは約3分の1にのぼっており、過去の職務内容や期間など経歴詐称になるともっと多かったという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング