では、仮に「給与計算は1分単位でするべき」とした場合、果たして労働者は幸せになれるのだろうか?
例えば、アルバイトの学生が仕事の合間におしゃべりをしたとする。「雑談は仕事外だから」と、勤務中でもその時間は休憩扱いとする経営者が出てこないとも言い切れない。もっともこれは極端な話だが、オーナー店長が勤務時間にシビアになることは想像に難くない。実際、出退勤時のタイムカードを押す行為がシビアになるだろう。
また、アルバイト同士の間でも亀裂が生まれる可能性がある。例えば、要領のいいアルバイトなら10分足らずで終わる仕事が、要領の悪いアルバイトは20分かかる場合がある。
1分単位で給与を計算する以上、短時間でテキパキと仕事をこなすアルバイトは経営者にとって理想的だ。しかし、モタモタしているアルバイトは時間がかかるため、同じ仕事を任せても時間がかかった分、給料を多く払わなければならない。デキるアルバイトより、要領が悪いほうに給料を多く払うなんておかしな話だ。その結果、経営者がアルバイトをランク付けするようになる。
アルバイト側としても「なんで自分より仕事が遅いアイツのほうがたくさん給料がもらえるのか」と思うのは当然。一方、仕事が遅いアルバイトも「10分でできる仕事に1時間かかるようなら怒られても仕方ないけれど、たかが数分他の人より仕事が遅いくらいで文句は言われたくない」と思うだろう。いずれにしても、職場は険悪な雰囲気になり、人間関係にも支障が出てくるだろう。
法の抜け道を悪用する経営者や労働者には厳しい対応を望むが、何でもかんでもしゃくし定規に物事を決めてしまうと、実際の運用に役立たない例は少なくないのだ。
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