もう1つ、ブラックバイトの条件に「バイトなのに責任が重い」というのがある。これには、お客さんの意識の関わるところが大きい。
「社員かアルバイトかなんて関係ない」「アルバイトでもお金を稼いでいる以上プロじゃないの?」
実際に寄せられるクレームには、こんな意見がある。お客さんが、アルバイトに対してもプロ意識や責任を求めてくる時代なのだ。
これがだんだんエスカレートしてくると、経営者の感覚もマヒしてくる。以前の記事、「コンビニが恵方巻きの販売に力を入れる、もうひとつの理由」でも触れたが、クリスマスケーキや恵方巻など、営業成績に直接影響するような販売ノルマをアルバイトに課すという悪循環を生むケースもある。
筆者が思うに、アルバイトがブラック化する要因の1つは、業務の多さに伴うアルバイト戦力化の遅れだ。筆者がコンビニ業界に入ったばかりのころは、アルバイトが覚える仕事は限られていて、全くの初心者でも教育期間は3カ月もあれば十分だった。
ところが、近年は公共料金の支払い代行や宅配便の受け付け、ファストフーズの店内調理にデリバリーなど、次々とサービスを導入し「なんでも屋」と化した今となっては、1年やっても業務の全てを覚えさせることなど到底不可能なのだ。
そんな状況なので、入っては辞めてを繰り返すアルバイトとオーナーや店長との間に信頼関係など生まれない。圧倒的なコミュニケーション不足により、信頼関係はおろか、逆に不信感がつのる始末。本来、互いに信頼し助け合うべき間柄なのに、経営者は「いつまでたっても仕事を覚えない使えないバイトだ」と思い、アルバイトは「覚える仕事が多過ぎるんだよ」と不満をもらす――。両者が歩み寄るどころか、むしろ対立を生んでしまっているのだ。
ブラックバイトの問題は一方から見ただけでは解決しない。どちらかが、自分の言い分だけを押し通したところで、誰も幸せになれないと思うのは筆者だけだろうか。
元コンビニ本部社員、元コンビニオーナーという異色の経歴を持つ。「タフじゃなければコンビニ経営はできない。優しくなければコンビニを経営する資格がない」を目の当たりにしてきた筆者が次に選んだ道は、他では見られないコンビニの表裏を書くこと。記事を書きながら、コンビニに関するコンサルティングをやっています。「コンビニ手稿」
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