テスラは未来のクルマか?池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)

» 2016年04月18日 08時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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電気自動車の負の遺産

 テスラがエコである理由は、たった1点、電気自動車であるということだけなのだ。そのハイパフォーマンス志向は、70Dでさえ、ガソリンエンジンで言えば5リッターV8級のレベル。設計思想的にはエネルギーを上手に使おうという気遣いが全く感じられず、バッテリーもモーターも「ドカ盛り」志向。電気自動車のマッスルカーとしか思えない。

 では、なぜそういうことになったのか? それはイーロン・マスクのマーケッターとしての高い資質によるものだろう。彼の目から見る限り、現時点では電気自動車は真面目に設計してはいけないということなのだ。まずは固定概念を壊すこと、そのためには電気自動車がパフォーマンス的に劣っているというイメージを徹底的に破壊して「電気自動車=速い」というイメージを植え付ける必要があるということだろう。

 そういう目標に向けて彼は一段ずつステップを上がってきた。ロータスのシャシーを使ってロードスターを作り、ハイパフォーマンスセダンのモデルSとSUVのモデルXを作り、そして今回、量販車としてモデル3を作った。いずれも電気自動車のパフォーマンスを誇示することが目的に思える。つまりテスラが今行っていることは未来に向けた飛行ではなく、電気自動車の負の遺産を埋める作業なのだ。

 テスラが加速性能と航続距離を誇らないモデルを作ったとき。それこそが電気自動車の本当の夜明けになるのではないか。

【変更履歴】一部事実と異なる箇所があったため、記事初出時から変更しております。訂正してお詫び致します。(4/19 16:27)

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。

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