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» 2016年04月22日 08時00分 公開

事例に学ぶ、地方創生最前線:災害が多い国に学ぶ、倒れても立ちあがる「復活力」 (4/4)

[石川孔明,ITmedia]
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次世代の漁業を支えるイノベーションを生み出す

 新しい領域で事業を生み出す挑戦とともに、伝統産業にイノベーションを生み出す試みも盛んだ。「アイスランド・オーシャン・クラスター」は、アイスランドならではの、漁業に関連した新規創業を支援する企業だ。レイキャビク港に位置する施設には、同社が支援する数多くのフィッシング・スタートアップが入居している。

レイキャビク港湾地区にあるアイスランド・オーシャン・クラスターのシェアオフィス。建物内部はきれいにリノベーションされており、数多くの起業家が入居している

 「漁業は閉鎖的な産業であると捉えられがちですが、実際にはイノベーションの宝庫なのです。アイスランドには資源保護の観点から漁獲量の総量規制があります。獲れる量には限りがあるので徹底したコスト削減や、魚一匹を捨てるとこなく使い切り、多くの収益を生み出すことが求められます。そういった背景のもと、新しい冷凍技術や、これまで捨てられていた部位を医療品や美容へ活用する技術が開発されているのです」とCEOであるソアー・シグフソン氏は語る。2011年に7社と始めたこの取り組みは、今では64社が入居するまでに拡大し、米国はじめとする海外展開も進みつつあるという。

 このように人口32万人とは思えないほど、アイスランドは様々なチャレンジに満ちている。その背景を行政関係者はこう語った。「国民の大半が英語を話し、インターネットが使いこなせ、女性の社会参画が盛んなことが、アイスランドの経済を支えています。加えて、地縁血縁が強いため結束力があることが、この国の強みなのだと思います。火山国で災害が多いためか、失敗にめげずに立ち直るのが早いことも特徴ですね」

 日本とアイスランドを同等に扱って示唆を引き出すのは、人口規模が違いすぎて適切ではない。しかし地方都市にとっては、示唆深い事例にあふれていると言えるだろう。日本からは地熱発電所への視察が多いということであったが、装置のみではなく、現象の背後にある文脈にも注目したい。災害が多く自然資源に恵まれた島国が「そこにあるもの」を生かしてどのような経済循環を生み出しているのか、そしてそれを担う人材をどう輩出しているのかを深掘りすることで、地方の独自性を生かした生態系を育むヒントが得られるのではないだろうか。

プロフィール:

石川 孔明

1983年愛知県吉良町生まれ。地元愛知県にて漁網のリユースで起業後、外資系コンサルティングファームを経てNPO法人ETIC.へ。社会起業家や起業、行政を対象としたリサーチ&コンサルティングを担当。2011年に世界経済フォーラム・グローバルシェイパーズコミュニティに選出。リクルートワークス研究所客員研究員。

NPO法人ETIC.(エティック)

1993年設立、2000年にNPO法人化。起業家型リーダーの育成を通した社会・地域づくりに取り組む。東日本大震災後、東北のリーダーを支えるための「右腕プログラム」を立ち上げ、これまでに127のプロジェクトに対して、228名の経営人材を派遣している。2013年度からはジャパン・ソサエティーの支援のもと日米交流プログラムや助成プログラムも実施。


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