「TRAIN SUITE 四季島」の価格は世界トップクラス、サービス内容は見合っているか?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/5 ページ)

» 2016年05月13日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

海外の鉄道旅行好きも満足できそう

 ここまで鉄道趣味的な話になってしまったけれど、観光要素も充実している。3泊4日のツアーの1日目は日光、2日目は函館で下車観光が設定されており、1泊数万円前後の高級旅館に宿泊する。温泉と和のもてなしだ。

 3日目は青函トンネル通過に2つの選択肢がある。1つはそのままTRAIN SUITE 四季島に乗車し続け、青森市内を観光して弘前へ。もう1つは新函館北斗から北海道新幹線に乗り換える。新幹線に興味を持つ海外の鉄道ファンにとって、この選択は魅力的だ。新幹線に乗って先回りし、短縮した時間を使って、大人気の観光列車「リゾートしらかみ」を組み合わせたところも良いアイデア。その車内で夕食が提供されるという、普段のリゾートしらかみにはない特別感も良い。

1泊2日コースの路線図(出典:「TRAIN SUITE 四季島」公式サイト) 1泊2日コースの路線図(出典:「TRAIN SUITE 四季島」公式サイト

 青函トンネルは現在、世界最長の鉄道トンネルだ。しかし残念ながら6月1日に世界第2位になる。スイスで全長57.1キロメートルのゴッタルドベーストンネルが開業するからだ。それでも青函トンネルの海底通過は、海外からの旅行客にとって良い記念になるだろう。

 4日目は日本海側で早朝の水族館または温泉朝風呂、昼ごろに世界的にも知られる金属製洋食器の街・燕の伝統工芸「鎚起銅器」を見学する。国内はもとより、海外からの旅行者にも満足度が高そうだ。

 1泊2日のツアーはTRAIN SUITE 四季島そのものを楽しみたい人に向いている。下車観光地の山梨と会津若松は魅力的だけど、短い停車時間でそれぞれの地の魅力が伝わるかどうか。外国人観光客にとっては分かりにくそうで、国内旅行者向けだろう。

 目玉はなんと言っても姨捨駅。日本3大車窓の夜景を楽しむ。停車時間は約50分だ。姨捨駅は無人駅である。そこに「夜景バー」が設置される。TRAIN SUITE 四季島の利用者向けにわざわざ作った。かなり贅沢な設備だ。「使用開始後はそのほか観光などでの活用を検討」というから、現在運行中の観光列車「ナイトビュー姨捨」でも使われるかもしれない。しかし、誰でも使えるとなるとTRAIN SUITE 四季島の特別感が薄れそうだ。JR東日本がどんな采配をするか興味深い。

篠ノ井線の姨捨駅に夜景バーを設置する(出典:JR東日本長野支社プレスリリース) 篠ノ井線の姨捨駅に夜景バーを設置する(出典:JR東日本長野支社プレスリリース

 姨捨で心地よく酔って眠った翌朝は会津若松にいる。この意外性もいい。公式サイトの地図を見ると、しなの鉄道、えちごトキメキ鉄道、信越本線、磐越西線経由になるようだ。このルートも鉄道ファンをくすぐる。

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