2014年2月、米・ニュースメディア『デイリービースト』と『週刊文春』がそろって、日本オリンピック委員会(JOC)の副会長を務める日本大学の田中英壽理事長が暴力団トップと一緒に並んでる写真を報道した。JOCの有力者がこんな「黒い交際」をしているわけだから、東京五輪は反社会勢力が裏で暗躍する「ヤクザ・オリンピック」になるのは間違いない、なんて調子で批判したのだ。
これに反応したのは、ネットと日刊ゲンダイぐらいで、テレビや新聞は報道があったことすら知らないかのように沈黙を守った。
まさかマスコミには「電通タブー」だけではなく、「日大タブー」もあるのか――なんて思わないでほしい。このとき、マスコミの記者たちは「当局が動くまで静観」というスタンスを貫いていたのだ。
実は『デイリービースト』と『文春砲』が報じる前から、日大・田中理事長の「疑惑」というのは、記者たちの間でわりと有名な話だった。
日大前理事長時代、学内の特別調査委員会でも不透明なカネの流れが追及されており、一部メディアが厳しく指摘していた。急先鋒はおなじみのFACTAで、山口百恵の赤いシリーズさながら、「黒い交際」「黒い別荘」と1年以上にわたってキャンペーンを展開していた。
当時、テレビや新聞の暴力団や特捜部の担当記者たちと別件の情報交換でよく会っていた。世間話で、「田中理事長の件、なんで参戦しないの?」と尋ねると、彼らは決まってこう答えたものだ。
「はじけてくれないと難しいですね。いつはじけてもいいように材料集めはしているんですけど」
「はじける」というのは事件記者の用語で、「事件化」を意味する。つまり、「疑惑」に対して捜査当局や文科省などがオフィシャルに動きをみせた段階で、一斉に報道解禁をする準備を進めているのだ。
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