ガーディアン報道を取り上げたのはスポーツ紙だけではない。BuzzFeedなどのネットメディアもごく普通に報じているし、ガーディアン紙とともに共同調査を行い、既に今年2月に『東京五輪招致で電通「買収」疑惑』といち早く報じているFACTAも公式サイトなどでしっかりと「追撃」している。
こういう状況下で、テレビと新聞が不自然に「電通」をスルーすれば、その「奇行」に注目が集まる。つまり、かえって「悪目立ち」をしてしまうのだ。中国共産党のマスコミ統制が、自国民のみならず世界中に知れ渡っているように、ネット全盛の時代、テレビや新聞の口を封じることは逆効果なのだ。
これは企業のリスクコミュニケーションをちょっとでもかじった者ならば、誰でも知っている基本中のキだ。電通ほどの世界的広告代理店が、「テレビ・新聞は黙らせといたから安心だわい、ガハハハ」なんて昭和の企業小説に出てくるフィクサーのような「モミ消し」を平成の世に行うだろうか。
行うわけがない。
もし仮に、電通がテレビ・新聞を完全にコントロールできるというのなら、あのような不自然な報道スタイルにはならない。スポニチや日刊スポーツが「電通タブーに切り込んだぞ!」なんて称賛の声があがっていないことからも分かるように、ストレートにサクッと報じられたほうが世の関心を集めず、「得策」だからだ。
そうなってくると、新たな疑問が浮かぶ。なぜ大手マスコミは「電通」の名を伏せたのか。
テレビ・新聞からしても、「広告で首根っこをつかまれているんだろ」と叩かれる。電通にとっても「悪目立ち」をする。関係各位にダメージを与えるような報道スタイルを、なぜテレビ・新聞はそろいもそろって選んだのか。バカなのか。
いや、バカではない。実はこれこそがテレビ・新聞を蝕んでいる「電通タブー」よりも深刻な病の症状なのだ。それを説明していくうえで格好の事例がある。「ヤクザ・オリンピック」だ。
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