TBSラジオ「14年10カ月連続聴取率トップ」強さの理由は──「真面目さ」(2/4 ページ)

» 2016年06月03日 08時00分 公開
[青柳美帆子ITmedia]

”指名買い”される番組を

 報道だけではなく、バラエティーのような“聴いて面白い番組”作りにも力を入れている。TBSラジオ全体を応援するリスナーもいるが、多くは好きな番組ごとに帰属意識をもったファンだ。

 ラジオやテレビといったメディアはよく「受動的」と言われる。つけっぱなしにして、なんとなく聴いている……という姿勢だ。それゆえ「前の時間帯の聴取率が悪いので、そのあとの時間帯の番組も調子が悪い」といった説明もされがちだ。しかし、番組を編成する編成部は、実際に番組を作り上げる制作部に対してこのような思いを抱いているのだという。

 「制作側は”流れで聴かれること”を目指すのではなく、”この番組を聴く!”と能動的に選ばれる番組を作って、ファンを増やしてもらいたい」

 なんとなくつけっぱなしにする受動的な聴取率よりも、「伊集院光深夜の馬鹿力」や「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」といった、その番組のためにラジオをオンにするリスナーを増やす。「こうした意識のもとに作られた番組の集合体がTBSラジオ。正直、今のTBSラジオのラインアップは、テレビと比べてもエッジが立っていると思う。こんなに攻めているタイムテーブルはなかなかない」と三宅さんは言う。

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 リスナーの行動を調べると、TBSラジオの番組間で横断して聴取するリスナーが多いのだという。例えば深夜1時の「JUNK 山里亮太の不毛な議論」のファンが、山里さんが出演する昼1時からの「たまむすび」を聴く──といった具合だ。TBSラジオ内でのクロス出演やゲスト出演で、双方の番組ファンを増やすことも狙っている。

14年10カ月前の”悲願の日”

 14年と10カ月間、首位の座に立ち続けているTBSラジオ。しかし15年前は、ニッポン放送の背中を追いかけていた。80年代、ニッポン放送が一強だったときは、「何をやってもニッポン放送には勝てないのではないか……」という雰囲気も漂っていたという。

 「それでも負けじと一生懸命目の前の番組を作っていったら、いいものができ始めていった。いいものができると、リスナーからの反応も良くなり、好循環が生まれ始めた」

 そして迎えた2001年8月。TBSラジオは初めて首位を獲得する。それが実現した要因の1つは、“聴取率調査の対象年齢”だった。01年8月以前の対象は、12歳から59歳。それが、12歳から「69歳まで」に引き上げられたのだ。

 新たに対象になった60歳から69歳までのシニア層に支持されていたのが、「大沢悠里のゆうゆうワイド」「土曜ワイドラジオTOKYO 永六輔その新世界」「森本毅郎・スタンバイ!」──といった定番の番組だ。この数字がカウントされたことで、グッと数字が伸びた。

 「ニッポン放送を抜いて首位になることは悲願だった。対象が69歳まで広がると聞いて“イケる!”という気持ちはあった。けれど、たとえ対象層が広がらなくても、“うちは強くなっている”という感覚は現場にあった」

 実際、首位を獲得してから10年以上が経過し、当時60〜69層だったシニア層は、既に調査対象外だ。それでも首位の座を譲らないということは、リスナーの若返りや新規リスナー獲得に成功していることを意味している。聴取率で見るとまだまだシニア層は強いが、それは業界全体の傾向。”新陳代謝”をするようにタイムテーブルを作っているのだという。

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