TBSラジオ「14年10カ月連続聴取率トップ」強さの理由は──「真面目さ」(3/4 ページ)

» 2016年06月03日 08時00分 公開
[青柳美帆子ITmedia]

「ゆうゆうワイド」終了のプレッシャー、そして期待

 新陳代謝を象徴するエピソードは、今年3月の大改編だ。中でも、長寿番組であり、かつ高聴取率ランキングの常連だった「大沢悠里のゆうゆうワイド」の終了は大きな話題にもなった。

 「『ゆうゆうワイド』は今の社長がTBSに入社した時から続いている大きな番組。今のTBSラジオの人間のほとんどは、お昼に『ゆうゆうワイド』がかかっていない――悠里さんの声が聞こえない世界を知らない。それを終わらせるのは大きなプレッシャーだったし、終わらせるに当たって万全の準備をした。”あんたたちならできるよ!”と自信をもって送り出せるスタッフと出演者に託した」

 後番組として始まったのは「伊集院光とらじおと」だ。「悠里さんの後は、この人しかできない」と、屈指の人気パーソナリティーである伊集院さんにバトンを託した。

 その結果──「伊集院光とらじおと」は、最高聴取率ランキング1位という実績を出した。「期待を裏切らないすごい結果が出た。関係者はほっと一安心というところだと思う」。リスナーからは「新番組を楽しみにしていた」という好意的なものも多いが、「悠里ロス」になっているというものも多いという(「悠里ロス」に対しては、新番組「大沢悠里のゆうゆうワイド土曜日版」が受け皿になっている)。

radikoはラジオをどう変えた?

 ラジオはWebの登場で変わった。特に大きな影響を与えたのが、ネットでラジオ放送を聴ける「radiko」だ。難視聴地域の改善をうたって10年にスタートし、現在は多くのAM/FM放送局の番組をPCやスマホで楽しめるようになっている。

 ラジオのネット配信に対し、放送関係者から当初は否定的な声が上がっていたこともある。radikoに対して複雑な思いはあるか? と尋ねたところ、三宅さんは意外そうに首を傾げる。

 「うれしくてしょうがない。radiko登場以前は、そもそも10代や20代は受信機をほとんど持っていなかった。ガラケーも、FMが入るものはあってもAMは搭載しにくい。ラジオ業界の人間は、”絶対に携帯電話にラジオを入れたい”と悩んでいた。そこで現れたradikoは、アプリで携帯に入れられる。最高のチャンス」

 ラジオの聴取率とは「どれだけのリスナーがラジオ番組を聴いているか」を示す指標。首都圏ではビデオリサ―チが調査を行い、12歳から69歳までを対象にアンケート方式で集計している。テレビの視聴率調査とは違い、受信機による計測ではないため、ネットやradikoでの視聴もカウントされるのも「うれしい」につながるのかもしれない。

 ラジオは、ノンリスナーに番組を聴いてもらうまでのハードルがとても高いメディアだった。面白そうな番組があると知っても、放送地域外なら聴取不可能。地下鉄や鉄筋コンクリートの建物の中ではラジオの電波が届きにくい。そもそもラジオがないという家庭も増え、ラジオを買うところから始めてもらわなければいけなかった。そんな状況がradikoの出現で一変した。

 「TBSラジオの番組は、何かのきっかけで聴いてもらえさえすれば、継続的なリスナーになってもらえる魅力があると思っている。ノンリスナーに第一歩の行動をさせることが、radikoをはじめとするネット戦略のおかげですごくやりやすくなった。ラジオを聴くことのできるデバイスの数はとても増えたと思う」

TBSラジオのWebサイト。現在放送中の番組情報とともに、radikoの番組ページへリンクを張り、すぐにPCなどから楽しめるようにしている

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