英国のEU離脱を楽観視できるこれだけの理由新連載・加谷珪一の“いま”が分かるビジネス塾(3/4 ページ)

» 2016年06月29日 08時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]

実質的にはEUを離脱しないという可能性も?

 さらにいえば、今回、英国が離脱したからといってEUとの関係がゼロになってしまうわけではない。多くの人は、EUへの加盟というのはイチかゼロかの二者択一とイメージしているかもしれないが、現実はそうでもない。

 EUとの関わり方については、「貿易」「法制度」「予算」「通貨」という4項目に分けて考える必要がある。この4項目全てに関する共通ルールを受け入れているのが、フランスやドイツ、イタリアなど、EUに属し、かつ共通の通貨であるユーロを採用している国々(ユーロ圏)である。

 ユーロ圏各国は、一部の国を除けば、人やモノやお金の移動が完全に自由であり、同じ通貨と法制度を採用している。言語が異なるということを除けば、違う国と認識せずにビジネスや生活ができる。

 だがユーロ圏に属している国は、EUに加盟する28カ国中19カ国しかない。英国もよく知られているように、ポンドという独自の通貨を持っており、ユーロ圏には属していない。つまり英国は、当初からEUとの距離を保っている国ということになる。通貨が異なるので、EUと英国との貿易には為替リスクが伴うことになり、ユーロ圏と同じように活動するはそもそも難しい環境にあった。その意味では、フランスやドイツといったユーロ圏の国が離脱することに比べればインパクトは小さい。

 またEUとの関わり方はさまざまであり、離脱を宣言したとしても、英国は引き続きEUと交渉することができる。交渉次第によっては、実質的にEUを離脱しないという裏技もアリなのだ。参考になるのはノルウェーのケースである。

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