これから「英プレミアリーグが“氷河期”に陥る」話赤坂8丁目発 スポーツ246(2/4 ページ)

» 2016年06月30日 06時30分 公開
[臼北信行ITmedia]

英国籍の自国民プレーヤーが“阻害”

 前出の「ボスマン判決」では、EU加盟各国の国内プロサッカーリーグにおいて設けられていた外国人枠についても「いかなることがあってもEU内での移動と就労を制限してはならないというEUの労働規約に反する」との司法判断が下された。プレミアリーグも同判決を機に外国人枠を撤廃している。

 これにより、欧州の移籍市場は一気に活性化。欧州各国のリーグ戦では、そこに出場するメンバーの多くが外国人選手というケースも決して珍しくなくなっていた。テレビ放映権の急騰によって、そこで手にした利益を他国の有力選手獲得に向けることのできるプレミアリーグのチームも数多かった。

 1999年12月にチェルシーFCが先発メンバー全員に外国人選手を起用。それからちょうど10年後となる2009年12月、当時プレミアリーグのポーツマスFC対アーセナルFCの一戦では、とうとう両軍の先発メンバー全員が外国人選手という状況も生まれた。

 英国内では、こうした近年の主流に対して異論が出ていた。自分の国のプロリーグなのに、英国籍の自国民プレーヤーが“阻害”される形になっているのはおかしい――。それこそが排他的かつ封建的な思想を持つ年配の英国民サポーターに共通する考えであると聞く。今回の国民投票でも離脱票の数字を伸ばす流れに大きく幅を利かせたのは、こうした年配層たちだった。

 これに多少の歯止めをかける意味もあって今から6年前に「ホーム・グロウン・ルール」(トップチームの登録人数を25人以内と定め、21歳の誕生日を迎えるシーズン終了までに3シーズンもしくは3年以上の期間でイングランドもしくはウェールズのチームでプレーした選手を8人以上登録しなければならない)が導入された。

 それでもここ数年、プレミアリーグの中で平均的に上位に名を連ね「トップ6」と評されている強豪クラブにおける自国選手の占有率を見てみると、チェルシー:25%、アーセナル:28.7%、トッテナム・ホットスパー:32.4%、リバプール:37.9%、マンチェスター・ユナイテッド:42.0%となっており、いずれも半分に届いていない(2016年5月時点、BBC放送調べ)。

「英国籍の自国民プレーヤーが“阻害”されてきた」といった声もある(出典:プレミアリーグの公式Webサイト)

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