もちろんそれは運行ノウハウだけではなく、バリューチェーン全体を見通すことになる。新車をベースに必要な特装仕様を作ったり、用品を用意すること、保険やローンの提供、補修整備など、ハードとソフトをすべて一体化した自動車周辺サービスを提供することによって、最終的に世界の「お客さまの笑顔」を目指すのが中嶋氏の説明するビジョンである。
配布された資料によれば、商用車は2015年の実績ベースで、トヨタ全体の販売台数の約3割、262万台を売るとある。巷間に伝えられるトヨタの世界販売台数1000万台に対して262万台では3割に満たないと思う人もいるだろうが、中国での販売台数は会計基準上の連結決算会社とは見なせないため、別計上されている。2015年度のトヨタの決算書上の販売実績は897万1864台となっている。
また商用車について「数字は具体的に言えないが、収益貢献度は大きい」と言う。つまり利幅が大きいビジネスだということだ。CVカンパニーは、存在こそ地味ながら、トヨタの収益を支える屋台骨の1つである。
商用車が乗用車と決定的に違うのは、オーナーとドライバーが別だということだ。これまでどうしても購入意思決定者であるオーナーに注意が向いていたこともあったと、中嶋氏は素直に述懐する。しかし、仕事で毎日乗るクルマが、昨年からトヨタが打ち出している「もっといいクルマ」であったとしたら、それだけで世界中で働く人々の幸福度は上がるはずである。
だからこそ「もっといいCVづくりは世のため人のために重要なのです」。そういう言葉を聞くと、もっといいクルマづくりは商用車にこそさらに重要に思えてくる。トヨタの事業戦略が思うように進むかどうか、世界の人々により幸福を届けていかれるかどうかを注視していきたいと思う。
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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