日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。
今年の夏は「ワキ汗」がえらいことになりそうだ。
「お前の脇の状態など知ったことか」「いきなり気持ちの悪い話をするな」などと怒りの声があちこちから飛んできそうだが、なにもこの場を借りて個人的な悩みを相談しようというわけではない。
近年、制汗剤市場の中で急成長をしている「ワキ汗」のカテゴリーがここにきて一気に市場として拡大しそうな気配だと申し上げたいのだ。
ブレイクのけん引役は、沢尻エリカさんがワキ汗の出口に蓋(ふた)をするというインパクト大のテレビCMでおなじみの「Ban汗ブロックロールオン プレミアムラベル」(ライオン)だ。
今年2月に発売してから、あれよあれよという間に売り上げを伸ばし、5月の日経POSデータでは、制汗剤カテゴリーの第2位をマーク。「直ヌリ」の売り文句でワキの臭い対策では不動の地位を築いた「デオナチュレ ソフトストーンW」(シービック)に迫る勢いだ。さらに翌6月には、発売4カ月で累計出荷個数100万個を突破するなど、まさに破竹の勢いなのだ。
ライオンによると、「ワキ汗対策カテゴリー」を含む直塗り制汗剤市場は、2016年1〜3月で前年同期比130%(2億9000万円)と伸長しているらしい。この勢いがこれから夏本番を迎えてさらに加速していくことに加え、今年は猛暑になると言われている。ジメジメした暑さの下、「ワキ汗対策」をうたう商品が大ブレイクをするのは間違いない、と個人的に思う。
市場のトレンドからも、その兆候ははっきりとみてとれる。市場調査会社のインテージによると、2015年の制汗剤の市場規模は前年比3%増の389億円。1990年の市場規模は、167億円と試算されていたので、この25年でおよそ2倍に成長をしてきた。
これを引っ張ったのが、「8×4」に代表されるパウダースプレー型制汗剤だ。男性はあまりピンとくる話ではないが、制汗剤といえばパウダースプレー型の「8×4」という時代が長く続いた。
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