なぜ鳥越俊太郎さんは文春・新潮を告訴するという選挙戦略をとったのかスピン経済の歩き方(2/4 ページ)

» 2016年08月02日 10時48分 公開
[窪田順生ITmedia]

鳥越さんが「週刊誌告訴」に踏み切った理由

落選の連絡を受けて、鳥越俊太郎氏は「準備が足りなかった点など多々ありましたが、基本的には私の力が及ばなかったと考えております」とコメントした(出典:鳥越俊太郎のFacebook)

 かつて今の鳥越さんのように「傷つけられたという女性の告発を事実無根だと主張してやりすごした政治家」がいた。

 宇野宗佑首相である。

 覚えている方も多いかもしれないが、神楽坂の芸者さんが宇野首相と月30万で男女関係をもっていたとことを、週刊誌に告発したのだ。

 当初、この問題は新聞やテレビはこぞってスルーをした。政治家の番記者には、「カネ」を書いても、「下半身」は追及しないという不問律があったからだ。

 いい悪いは別にしてそれが「常識」だったため、宇野首相も国会で野党から女性問題に質問をされても、「こうした報道には、公の場でお答えすることは差し控えたい」とやりすごし、街頭での演説中にヤジが飛んでも無視を決め込み、周囲にも「事実無根だ」と説明をしていた。

 しかし、このネタは海外メディアが「日本の首相にセックススキャンダル」と大きく報じたことをきっかけに、女性人権団体などが問題視をして抗議、地方議会でも首相の説明を求める決議がなされるなど、逆輸入的炎上を果たし、宇野さんはついに首相退陣まで追い込まれてしまう。

 この芸者さんの告発を掲載したのが『サンデー毎日』。当時の編集長は鳥越さんだった。

 『夕刊フジ』などが指摘するように、今回の女性問題が「ブーメラン」になっているなどという言いたいわけではない。

 鳥越さんが「週刊誌の告訴」という戦略に踏み切ったのは、このときの宇野首相の対応ミスを教訓とした可能性がないのか、と申し上げたいのだ。

 自分が仕掛けた「告発」によってじわじわと追い詰められ、「説明責任を果たせ」の大合唱のなかでボコボコにされた宇野さんの姿は鳥越さんの脳裏にこびりついているはずだ。

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