エコノミストはどうか知らないが、個人的にはこれほどジャーナリストの本質をついた言葉はない、と感心することしきりだった。「いいジャーナリスト」は決して自分の非をかえりみえない。負けも認めない。どっかの記者がTwitterでつぶやいたように「ジャーナリストは正義」だからだ。
なんて傲慢な連中なのだ、と驚かれるかもしれないが、当時の『朝日新聞』の秋山耿太郎社長も浜さんの講演の後、「浜教授が言ったように、独善的で懐疑的で執念深いことが記者の特性でなければならない。それが編集面の生き残り策のすべてだ」(同上)と述べている。
鳥越さんが「いいジャーナリスト」として51年も一線で活躍されているのは、「独善的で懐疑的で執念深い」という特性をもつことが大きいのだ。
硬骨の人権派弁護士として知られている宇都宮健児さんは、野党統一候補の座を譲った鳥越さんの応援にまわることはなかった。その理由を文書にして公開したのだが、そのなかに鳥越さんのジャーナリストぶりがよく分かる記述があるので、引用させていただこう。
『鳥越候補は、根拠を述べることなく「事実無根」として、刑事告訴まで行っています。しかし、私たちはこの記事そのものから見て、事実無根と考えることはできません。むしろ、女性とその関係者の証言まで否定することは、被害女性に対するさらなる人権侵害となる可能性があります』
こういう理路整然とした指摘にもまったく聞く耳をもたないということは、己の「正義」について揺るぎない自信をもっておられるということだ。
「文春」の記事がでたとき、まっさきに「なにか政治的な力が働いている」と疑心暗鬼になっていたことも記憶に新しいが、敗北が確定した後もまだ「事実無根の週刊誌による選挙妨害報道があった」と恨み節たっぷりで述べていた。さらに、小池さんがよほど許せないようで、「これからは都政を監視していくと」という宣戦布告まで飛び出した。
独善的で、懐疑的で、執念深い。ここまでジャーナリストらしいジャーナリストを他に知らない。この調子なら「被害女性」と文春・新潮がこてんぱんにたたきのめされる日も近い、かもしれない。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング