日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。
「私の強みは、聞く耳をもっていることだ」としきりにアピールしていたジャーナリストの鳥越俊太郎さんが、都知事選でボロ負けをしてしまった。
行政の知識ゼロでも「3日勉強すればラクショー」という頭脳明晰さに加え、ボリューム満点のロマンスグレーに甘いマスク、さらに「安倍政権の暴走を止めます」「半径250キロ圏内の原発を止めます」という一部の方たちから熱狂的な支持を受けるであろう政策を掲げていた鳥越さんが、なぜ期待外れともいうべき得票数になってしまったのか。
敗因については、既に「主張が支離滅裂」「野党色がですぎ」などの論評が多くなされているが、なかにはイメージ戦略の致命的なミスを指摘する声もでている。
女性問題を報じた「文春」や「新潮」を東京地検に告訴したことが、「正義のジャーナリスト」という印象を吹き飛ばしてしまったというのだ。
我々一般人の感覚では、「言論の自由」を掲げて、安倍政権は言論弾圧をやめろシュプレヒコールまでしていた著名ジャーナリストが、言論ではなく告訴という実力行使にでることになんとも言えないモヤモヤ感が漂う。橋下徹さんや多くの人々がツッコミを入れているように、「ジャーナリストなのだから説明責任を果たしなさいよ」という思いがまずでてくるからだ。
ましてや、相手は甘利明元経済再生相をはじめ多くの著名人を葬ってきた「文春砲」と、5人不倫で乙武さんの政界進出を打ち砕いた「新潮砲」である。週刊誌ジャーナリズムのツートップを向こうに回して、訴状をふりかざしても、「さすが正義のジャーナリスト、官邸の操り人形になっている文春や新潮をたたきのめせ!」なんて声がでてくるわけもなく、世の大多数は「政治家とかには偉そうにいろいろ注目つけてたけど、自分には大甘なのね」とシラけてしまう。
あのソフトな語り口で釈明をすればそこに理があるかどうかはさておき一定の「ファン」は残ったはずだ。にもかかわらず、なぜ鳥越さんは好感度を地に落とすような無理筋の戦法をとったのか。
そんなもん政策と同じでなにも考えてねーんだよ、という声が聞こえてきそうだが、個人的には、熟慮を重ねたうえでひねり出した鳥越さんなりの「妙案」だったのではないかと思う。
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