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» 2016年08月12日 06時00分 公開

長浜淳之介のトレンドアンテナ:てんやが天丼チェーンとして“唯一”全国展開できた理由 (2/5)

[長浜淳之介,ITmedia]

職人不要の仕組み作りで安価な天ぷらを提供

 高級料理のイメージが強い天丼、天ぷらの値段を劇的に下げる価格破壊を敢行したてんやのビジネスを成立させているのは、職人3人分の仕事を代行してくれるオートフライヤーの存在だ。人件費が掛からない分、安く提供できる。

 従来の天丼や天ぷらの専門店のイメージは、職人が素材を油の中に入れて、状態を見ながら、一品ずつ丁寧に提供するというものだった。作り置きをすれば安くできるが、味は格段に落ちてしまう。

 てんやが独自に開発したステンレスのベルトコンベヤー式オートフライヤーは、店員が素材に衣を付けて、コンベヤーに置くだけ。あとは、温度制御機能を持ったフライヤーが自動的に天ぷらを揚げてくれる。揚げ時間は、海老が一番おいしく揚がるように設定されており、それに合わせて野菜、イカなどの素材の大きさ、厚みが決められている。これが、揚げ立ての天丼なのに作り置きの天ぷらを使った他店の天丼よりも安く提供できる理由だ。

 オートフライヤーは、日本マクドナルド創業メンバーの1人でもあったてんやの創業者、岩下善夫氏の発案によるもの。なぜこれまで天丼、天ぷらのチェーン店が成立しなかったのか、熟考した末に開発に取り組んだという。てんやの創業した80年代後半は、すしブームが欧米で起き、和食が世界的に注目され始め、天ぷら、ラーメンなど、すし以外の日本の食文化にも光が当たろうとしていた。まさにそのときに、マクドナルドの先進的なチェーンオペレーションを応用し、クイックに提供できる天丼チェーンが生み出されたのである。

 「天ぷらは油の温度管理がものすごく難しい。温度が一気に上がりやすく、ネタをたくさん投入すると途端に冷めてしまいます。適正なのは170〜180度の高温でカラッと揚げるのがおいしい。160度以下になるとオイリーで衣が白くなってしまいますし、逆に温度が高過ぎると焦げてしまいます」(用松社長)。

 難しい油の温度管理を見える化するために、岩下氏はオートフライヤーのメーカーにまで職人を連れて行き、長年掛けて身に付ける天ぷら作りのコツをソフトに組み込むことに成功した。オートフライヤーは5代目までバージョンアップを重ねており、よりおいしく、より早く提供できるようになっている。例えば、海老の中心部の温度は以前なら85度で揚げていたのが、今は90度に改善され、よりアツアツで提供できるようになった。注文を受けてからの提供時間は、以前なら7〜8分かかっていたが、今は5分となっている。

photo てんやが独自に開発したステンレスのベルトコンベヤー式オートフライヤー

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