通勤中にケガをしたら? 労災保険が使えるケースと使えないケースマネーの達人(2/2 ページ)

» 2016年08月30日 05時30分 公開
[高橋豊マネーの達人]
マネーの達人
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通勤とならない場合

 労災保険では、原則として「逸脱」又は「中断」の間、及びその後の移動は「通勤」とはなりません。

「逸脱」とは

 通勤の途中に就業や通勤と関係ない目的で合理的な経路を外れることをいいます。

「中断」とは

 通勤の経路上で通勤の目的とは関係ないことを行うことをいいます。この「逸脱」「中断」の具体的な例としては、

  • 飲食店での飲酒
  • 映画館での映画鑑賞

 などがありますが、飲酒後や映画鑑賞後に普段の通勤経路に戻ったとしても労災保険の「通勤災害」には該当しません。

「逸脱」又は「中断」の例外

 通勤の途中で「ささいな行為」については逸脱、中断とはなりません。この「ささいな行為」とは、公衆便所を利用する場合や駅構内の売店でタバコや飲み物などを購入する場合などです。

 また、日常生活上必要な行為であって、厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合には、合理的経路・方法に戻った後は「通勤災害」の対象になります。しかし、「逸脱」・「中断」の間は通勤災害の対象にはなりません。

日常生活上必要な行為例

  1. 日用品の購入その他これに準ずる行為(総菜の購入、クリーニング店に立ち寄る場合や理髪店・美容院に行く場合など)
  2. 職業訓練、学校教育等において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上になる行為
  3. 選挙権の行使
  4. 病院又は診療所において診察又は治療を受けること
  5. 2週間以上の期間にわたり日常生活を営むのに支障がある配偶者、子、父母、配偶者の父母等の者の介護

 もし、通勤途中でケガをした場合は、労災保険が使えるかどうか会社の担当者や病院に相談してみてください。(高橋豊)

著者プロフィール:

高橋豊

ゆたか社会保険労務士事務所 代表

大学卒業後、不動産業界団体、建設会社にて勤務。労働関係法規や社会保険関係法規等に絡む業務や新卒採用などの人事、新入社員研修から入社3年目までの社内研修など経験。

社会保険労務士資格を取得後は企業に対して「人材がやめない企業づくり」をモットーに各種制度提案、就業規則作成から新卒採用のコンサルティングなどを行う。そして、遺族年金・障害年金などの複雑な年金請求のサポートを行う。愛知県雇用労働相談センターでの労働問題の相談員も務めている。

保有資格:社会保険労務士、宅地建物取引士、管理業務主任者


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