日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。
つい最近、『「ふんどし女子」密かに増殖!売り上げ年々増加「一度締めたら手放せない」その魅力とは?』(産経新聞 8月27日)というニュースが注目を集めた。
「へえ、ふんどしってそんなにいいものなんだ」と素直に驚く方もいる一方で、「どうせふんどしメーカーが仕掛けたステマでしょ」と疑い目を向ける方も少なくない。
確かに、そのような疑念が生じても仕方がないふしもある。
記事内では、女性用ふんどしの製造・販売を行う「プラスチャーミング」の経営者・中川ケイジさんが、ふんどし普及のために設立した「日本ふんどし協会」にフォーカスをあて、『女性たち10人以上』が集まったイベントの様子や、協会Webサイトで掲載されている『内蔵の働きが活発になって血行が良くなる』という医師のコメントを引用し、ふんどし着用のメリットを紹介している。
市場拡大を目指す事業者が、ホニャララ協会みたいな団体を設立して、メディアなどに働きかけて「ブーム」を演出するという建て付けが、かなり手垢のついたPR手法だということは、もはや広告・PR業界以外の方でもよく知るところだ。「怪しい」と感じる人がいるのもよく分かる。
さらに、この報道に対して疑惑の目が向けられる最大の理由は、一部の方から指摘された「ブラ男と同じで『この数年、よく増えている』とマスコミは言うけど、周りでそんな人見たことも聞いたこともない」というツッコミだ。
これは一理あって、実はこの4年ほどマスコミは事あるごとに「ふんどし女子が増えている」と触れ回ってきた。
例えば、これまでさまざまな「ブーム」をつくりだしてきたNHKの『あさイチ』では、2012年春に、「下着かぶれ」特集を行い、その中で締め付けのない「ふんどし」を愛好する女性を紹介している。この反響は大きく、2014年6月の「オンナの股関節スペシャル」の冒頭でも再び、『増加中!? ふんどし女子』を扱った。
『あさイチ』だけではない。地方紙でも以下のように似たような切り口が定期的に出されているのだ。
『ふんどし女子 じわり増加』(2012年6月14日 北海道新聞)
『身も心も開放感 ふんどし女子増加』(2012年6月29日 産経新聞大阪版)
『ふんどしブーム来た!? 女性にも愛用者じわり』(2013年2月24日 熊本日日新聞)
『手放せなくなる心地よさ “ふんどし女子”増殖中』(2014年5月24日 下野新聞)
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