あえて“高級”路線の逆を行く 米家電に本格参入するアイリスオーヤマの戦略は

» 2016年09月21日 17時10分 公開
[青柳美帆子ITmedia]

 アイリスオーヤマ(仙台市)が炊飯器など米家電に本格参入する。2005年に家電事業に参入し、大手メーカーの技術者を迎えるなどして開発力も強化。競合がひしめく成熟ジャンルへの参入だが、単価の高い高級路線をとらず、低価格な製品で勝負。市場シェア10%の奪取も視野に入れる。

米事業に注力するアイリスオーヤマ

米屋がつくる米家電

米蔵をイメージした売り場

 同社の米関連ビジネスでは、グループ会社が13年に精米事業に参入し、東北地方・北海道の米を販売。冷温で精米をするなど米の品質管理にこだわるとともに、“3合食べきりサイズ”などの展開や米蔵をイメージした売り場でアピールしてきた。

 同社の家電事業は09年の「efeel」シリーズなど、「簡単な機能の製品をお手ごろ価格で」といったコンセプトに基づく製品が中心だったが、13年以降、パナソニックやシャープなど大手家電メーカー出身の技術者を雇用し、大阪にR&D(研究開発)センターを設立したことで、独自の技術力を発揮した商品を開発。16年12月期の同事業売上高は600億円を見込むなど、成長を続けている。(関連記事:アイリスオーヤマはなぜ「家電事業」に参入し、「結果」を出してきたのか

 本格展開する米家電事業では、これまでの家電事業や精米事業で蓄積したノウハウや、同社のコンセプト「シンプル・リーズナブル・グッド」を踏襲。「米屋がつくる米家電」をキャッチコピーに売り込む。

 第1弾としてマイコン式炊飯器、第2弾の精米機を既に投入済み。第3弾として9月30日に発売する同社初のIHジャー炊飯器「銘柄量り炊きIHジャー炊飯器3合」だ。

量り炊きモードが売りの「銘柄量り炊きIHジャー炊飯器3合」

 大きな特徴は「量り炊き」モード。釜に入れた米の銘柄や量に対して最適な水量を自動で計算する機能で、水量の過不足によりご飯のおいしさが損なわれることを防ぐ。同社によると、この機能は「調査の限りでは業界初」。本体は分離式になっており、上部は「おひつ」として、下部はIH調理器としても使える。初年度に3万台の出荷を目指す。

高級路線はとらず

 近年の米家電市場では、高機能を売りにした高級炊飯器がトレンドだ。しかし同社は「消費者が必要としない機能を盛り込んでいるために高値になっている」と、「簡単」「おいしい」以外の機能はあえて絞り、比較的低価格帯(マイコン式は税別1万円以下、IH式は税別3万円以下)に投入していく方針。訪日外国人需要も意識せず、あくまで国内ユーザーがターゲットだ。

 16年の売り上げ目標は6アイテムで10億円(市場シェア0.8%)。17年は家電事業の主力として位置付け、16アイテムで30億円を掲げる。18年には22アイテム60億円(市場シェア4.7%)に拡大する計画だ。長期目標としてシェア10%を掲げ、ラインアップを拡充していく。

発表会の最後に、「銘柄量り炊きIHジャー炊飯器3合」で炊きあがったばかりのごはんを試食した。「ごはんって甘いんだよな……」としみじみ味わった

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