老害とはなんだろうか。辞書には、「企業や政党などで、中心人物が高齢化しても実権を握りつづけ、若返りが行われていない状態」とある。
では、老害とは具体的に、何歳くらいの人のことを言うのだろうか?職場の年齢構成、世代間の差、人材マネジメント方針、価値観などの変化から、「老害の若年化」ともいえる奇妙な状態が起きている。トライブ間の格差が顕在化しているのである。
そこには、バブル対ロスジェネ対ゆとりというような単純なものではない、抗争がある。これは単なる世代闘争ではない。若き老害族とそれ以外との闘いなのだ。
「Stay hungry, stay foolish.ジョブズが教えてくれたことを、僕は忘れない」――。「意識高い系」のよくある行動パターンで、このように名言を受け売りするというものがある。偉人が発した有名な言葉も、経営者や上司や大学の先生が言った言葉も、受け売りする。受け手のリテラシーが低いと、あたかもその人の言葉だと思えてしまう。
この名言の受け売りは「若き老害」たちのお家芸でもある。新入社員などに対して、若手社員がドヤ顔で名言を引用しつつマウンティングする光景が職場では展開されるのだ。
後輩への指導などの場面で、いちいち名言などを引用されるのは迷惑な話である。わずか数年しか長く勤めていないのにも関わらず、その間に知ったビジネス名言・格言を駆使してマウンティングをするのだから、質が悪い。
さらに、だ。世の中一般に知られている言葉によるマウンティングならまだいい。しかし、その企業に伝わる言葉や武勇伝、特に社長の座右の銘や、会社のビジョンなどをもとにマウンティングしたら、もう勝ち目はない。そんなもの、知るかという話である。長年続いている企業ならまだ分かるが、スタートアップベンチャーでそんなことを言われても、迷惑だ。
もっとも、これは若き老害社員だけが悪いわけではない。2000年代に入ってから、多様な従業員の行動の方向性をそろえるため、モチベーションを上げるためにも各社でビジョンやミッションの策定などが相次いだ。
創業して間もないベンチャー企業においても、この手のものは策定される。ビジョンや社訓は、まるでポエムのようになっており、さり気なく従業員の愛社精神に火をつける。
社畜化をはかるための道具なのだが、この手のものを浸透させるべく、経営者は社員に、やたらとビジョンの話をするのだ。採用活動においても、利用される。若き老害社員はこれに洗脳されたとも言えるだろう。
とはいえ、この手の名言受け売り型の若き老害社員は後輩にとってはいい迷惑である。
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