福岡の復旧工事に海外絶賛! その裏で世界を読み解くニュース・サロン(1/4 ページ)

» 2016年11月24日 07時15分 公開
[山田敏弘ITmedia]

世界を読み解くニュース・サロン:

 今知るべき国際情勢ニュースをピックアップし、少し斜めから分かりやすく解説。国際情勢などというと堅苦しく遠い世界の出来事という印象があるが、ますますグローバル化する世界では、外交から政治、スポーツやエンタメまでが複雑に絡み合い、日本をも巻き込んだ世界秩序を形成している。

 欧州ではかつて知的な社交場を“サロン”と呼んだが、これを読めば国際ニュースを読み解くためのさまざまな側面が見えて来るサロン的なコラムを目指す。


 福岡県福岡市で11月8日に、JR博多駅近くの道路が陥没したニュースは、世界的に大きく報じられた。

 都会の真ん中の道路に、ぽっかりと直径30メートル、深さ15メートルの穴が空いた様子は衝撃的だったが、実は道路の大規模な陥没は世界的に珍しくない。最近で言えば、2007年に中米グアテマラの首都グアテマラシティで陥没が起きて3軒の民家をのみこんで3人が死亡した。グアテマラでは2010年にも陥没が起きている。米国でもウィスコンシン州ミルウォーキー(2010年)やフロリダ州オーランド(2013年)でも大きな陥没事故が起きている。またロシア(2007年)や中国(2013年)でも発生している。

 福岡のケースでは、幸いなことに死傷者を1人も出すことはなかった。都市の中心部で起きたことを考えれば、それだけでも奇跡だと言えそうだ。

 そして今回の事故が海外でも大きく取り上げられたことは、日本でも報じられている。特に、事故の復旧工事が1週間という短期間だったので、その奇跡的な仕事の早さに世界は驚嘆した。とはいえ、実情を知る福岡の事情通に言わせれば、この話はそんな美談ではないと醒(さ)めた目で見ているが、それでもこれ以上のPRはなかったようだ。

 海外の反応はどんなものだったのか。例えば、米NBCテレビの人気モーニングショー『トゥディ』で、この話題が取り上げられたのは11月15日のこと。司会者が他の出演者に「あんな陥没が米国で起きたら、どれくらい時間がかかると思う?」と問いを投げかけると、出演者らは「1カ月?」「6カ月?」と答えた。司会者は「こういうものは一晩で修復される類のものではないのだが、日本では、これをたったの2晩で直してしまった。そうなのです、2日です」と言うと、スタジオが驚きに包まれた。

 米国でもインフラの老朽化などが問題視されていることもあるが、同番組は福岡の当局によるコメントを引用し、「陥没前よりも強度は30倍になったと述べている」とも伝えた。実際には2日で穴はかなり埋まったが復旧していなかったので、米大手メディアも“盛った”感はあるが、少なくとも日本人による驚きの仕事っぷりが、大人気番組のおかげで全米中に知れ渡ったのは間違いない。

11月8日、JR博多駅近くの道路が陥没した。写真は11月18日。道路は復旧し、クルマも走行していた
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