トヨタが送り出したTNGA第2弾 C-HRの実力とは?池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)

» 2016年11月28日 07時15分 公開
[池田直渡ITmedia]

 さて気になる走りはどうだったか? 今回は発売前の車両なので、公道ではなくクローズドのコースが用意された。隊列走行だったため、好きなペースでは走れなかった代わりに、先頭車両に引っ張られて公道ではやらないレベルの高負荷走行を試すことができた。

 まずはハイブリッドのFFだ。運転環境について、シートの出来は従来のトヨタ車の水準とは別格だ。室内空間へのドライバーの収まり、ハンドルやペダル類との位置関係も、シートの座り心地やサポートも良くなった。ただし、これは現行プリウスのときからであってC-HRで改められたわけではない。一点注文があるとすれば、シートにアップライトに座らせるなら、肩のホールドがもっと必要だと思う。ただしそれはC-HRをトヨタが打ち出しているほどスポーティーなものと受け止めればの話で、エコなSUVという話ならそもそもそこまでのホールドは求めないはずである。

タイヤが路面に力を伝える様子をフェンダーの量感で表現し、後方の穴では「前へ向かって進む」ことを表現している タイヤが路面に力を伝える様子をフェンダーの量感で表現し、後方の穴では「前へ向かって進む」ことを表現している

 さて、テストコースに出る。こういう思い切った加減速ではトヨタのハイブリッドはかなりイキが良い。エンジンとモーターがフル稼働した状況では加速も十分鋭く、ブレーキも回生オンリーからディスクへの受け渡しがないので、アラが出にくい。ガーンと踏んでギューッと減速するようなコントロールはむしろできて当たり前。本当はもっと微妙な日常領域の小さな速度制御がきちんとできるかどうかがハイブリッドのできを決めるのだが、それは近日中にある公道試乗で試してみる。

 ということで、できなければ困るという範囲の走行だが、レベルは十分高かった。高い重心にもかかわらず、旋回も得意で、ステアリングへのフィードバックでタイヤのグリップ限界を推し量ることが十分可能だった。必要なら緩くブレーキを舐めればラインを内側に巻き込ませることもできる。なるほどスポーティーなハンドリングである。先代プリウスでそんなことすれば、途中でステアリングのフィールがスコーンと抜けて滑らかに走れなかった。

 では、危険回避はどうだろう。例えば、目測を見誤ってオーバースピードでコーナーに飛び込み、無理矢理ハンドルをこじって曲がろうとする。どうなるかと言えば、フロントが緩やかに滑り出し、リヤは破たんを見せない。スタビリティコントロールが働いて比較的早く自然にクルマのコントロールがドライバーに戻ってくる。もちろん目測の誤りが大きすぎればどうにもならないが、筆者が意図的にやる気になれる範囲においては、ゆっくりとドリフトアウトしながら、減速していき、速度が落ちれば自然に前輪のグリップが回復する。仮に公道で何らかのアクシデントに遭遇しても危険な挙動を見せることはなさそうだ。もう一点付け加えれば、旋回中の外側タイヤで路面の荒れを拾っても、乗り心地は落ち着いている。これも先代プリウスのひどい突き上げや飛び跳ねと比べると大きな進歩だ。

 後でターボに乗ってみてはっきりしたのだが、やはりリヤのバッテリーの重量はハンドリングに多少の影響を与えている。旋回中にラインを変えたり、切り返したりしようとするときに慣性重量によるオーバーシュートを感じる。目くじらを立てるほどのことはないが、トヨタが「ニュルで鍛えた」とまで言うならば、一応指摘しておきたい。

 さてターボモデルはどうか? ハンドリングはこちらの方が優れている。慣性によるオーバーシュート感がグッと少ない。実はターボに関しては4WDとの組み合わせなので、絶対的な車両重量はハイブリッドの1440キロに対して1470キロと、30キロほど重い。にもかかわらず、走り味はターボの方がすっきりしている。むしろ軽く感じるのだ。

 さらに、普通4WDはステアリングになんらかの雑味が入る。希にそれが味わいになる場合もあるが、ピントの合った感じはしないものだ。ところがこの4WDは、事前にそう聞かされていても、ほとんど4WDらしさを感じることができなかった。タイヤが滑る領域においても、後ろの蹴りを感じない。トヨタがC-HRをスポーティーなものと定義付けるならば、ターボに軍配が上がる。もっともオーナーはSUV風のエコカーが欲しいのだろうし、その場合、エコカーとしては踏んだら燃費ががっくり落ちるターボより、ハイブリッドをチョイスすべきだろう。ハイブリッドも程度の差こそあれちゃんとスポーティーなものである。

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