「乗客がいない列車を減らす」は正解か?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/5 ページ)

» 2016年12月16日 07時30分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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快速運転で乗客を確保する津山線

 津山線は津山と岡山を結ぶ。都市近郊路線として1時間に1本の便があり、いくつかは快速列車で所要時間は約1時間。快速「ことぶき」は2両編成のディーゼルカーだ。日曜日の午後、津山駅を発車する時点で座席が埋まり、4人掛けのボックス席で相席になるほど。岡山に近づくにつれて乗客が増えて、立ち客もいる。帰りの便は空いていたけれど、この日は日曜日だから、平日は通勤通学客で混むだろう。沿線風景を見ると、快速停車駅付近は新しい住宅も多い。

津山線弓削駅に停車中の車窓。快速停車駅付近は新興住宅地になりつつある 津山線弓削駅に停車中の車窓。快速停車駅付近は新興住宅地になりつつある

 大都市近郊の大手私鉄に比べれば1時間に1本は少ない。しかし、大都市に住む人も、たいてい乗る列車は決まっている。つまり、通勤や通学にちょうどいい時間帯に列車が走れば乗客需要はある。芸備線も同様だ。広島から三次までは列車も、乗客も多い。

 私は津山線で岡山に出た後、折り返して津山に戻った。数少ない姫新線に1分で乗り継ぎ、佐用から智頭急行で智頭へ、智頭から折り返して上郡へ達して目的を果たした。速度と運行本数の面で、津山線が最も便利だった。1時間に1本の路線同士でも、接続がきちんと機能すれば便利だ。乗り継ぎ計画を作る作業はパズルのようで楽しい。しかし、日常の足として使う場合にそれでいいのか。

智頭急行は国鉄が運行する予定だった。建設途中で国鉄赤字問題によって工事凍結。しかし陰陽連絡線として特急列車を走らせるため第三セクターとして継承、営業を開始した。鳥取県、岡山県、兵庫県ほか沿線自治体と地方銀行などが出資している 智頭急行は国鉄が運行する予定だった。建設途中で国鉄赤字問題によって工事凍結。しかし陰陽連絡線として特急列車を走らせるため第三セクターとして継承、営業を開始した。鳥取県、岡山県、兵庫県ほか沿線自治体と地方銀行などが出資している

 中国山地内と山陽側の都市近郊では、沿線人口も違う。道路環境も違う。両者の鉄道を取り巻く条件は違う。だから、現在の中国地方のダイヤは適材適所かもしれない。それでも、山陽側の路線と中国山地内の路線の格差を見ると、中国山地内の列車のダイヤは改善の余地がありそうに思った。日本海側から中国山地の都市に向かいたくても、「鉄道より高速バスで山陽側に出て折り返したほうが早い」という状況は、やっぱりおかしい。

 「乗らないから減らす」は、悪循環の始まりだ。走っていなければ乗れない。無駄だと思われる列車を残し、どうすれば乗っていただけるか、これをまず考えなくてはいけない。ダイヤ改正を検討するたびに、地域と連携し、乗っていただく努力をしたい。そうしないと地域の人々が鉄道路線に無関心になる。だからといって、廃止するときに初めて地域と向き合っては遅い。

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