2015年4月に日本市場に再進出を果たした米国発のメキシカンファストフード店「Taco Bell(タコベル)」。開業当時、東京・渋谷の日本1号店は行列が絶え間なく続き、入店するのに1時間待ち、2時間待ちはざらだった。熱狂を持って日本の消費者に迎えられたタコベルは今、どうなっているのだろうか(関連記事:米ファストフード「タコベル」、約20年ぶりに日本“再上陸” なぜ今?)。
「渋谷の大行列はオープンから3カ月ほどは毎日のように続き、半年ほど経ってようやく落ち着いた。今でも休日は列ができることもあるが、平日であればスムーズに入店できる」(アスラポート・ダイニング 経営戦略本部 TACOBELLブランドの宮田寛部長代理)
実際、記者が訪れた平日昼間の渋谷店は、冬休み期間ということもあって中高生や外国人観光客の姿が目立っていたが、それほどの混雑はなかった。
オープンから既に1年9カ月が経過していることに加えて、現在タコベルは都内でほかにも汐留、青山、お台場に店舗を構えていることも関係するだろう。タコベルは日本進出当初、5年間で20店舗という控えめな目標を掲げていたが、連日の大行列を本国のタコベル経営陣が目の当たりにして、「日本市場はもっと伸ばせるのではないか」と判断し、アグレッシブな方針を打ち出した。2016年4月には、年内に新たに6店舗を出店する計画も明かした。
ところが、2016年の出店は2店舗にとどまった。当初の計画よりも遅れている。その一因は「物件の賃料高騰」だ。2020年の東京オリンピックの影響に伴う不動産価格の上昇に加えて、昨年来、Shake Shack(シェイクシャック)、Blue Bottle Coffee(ブルーボトルコーヒー)、Carl's Jr.(カールスジュニア)といった米国の外食チェーンが相次いで日本に進出しており、他社も同じような物件を求めることで競争が激化し、賃料にまで波及しているようだ。「ただ、既に物件の契約間際まで来ているものもあり、それほど計画と大きなズレはない」と宮田氏は述べる。
タコベルの日本での業績はどうだろうか。具体的な収益情報は非公開とするが、まだ大きく利益を上げている段階ではないという。さらに、出店計画に合わせて既に新規店舗の人員を確保しているため、その分のコストがかさんでしまっているそうだ。一般的な飲食チェーンの場合、新店舗オープンの1週間ほど前からスタッフがトレーニングし、開業後もOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)をしていることが多いが、タコベルではオープンの約1カ月前からスタッフは店舗でみっちりトレーニングを積み、万全な状態で開店を迎えるのだという。同社としては、2017年には新店舗を早々にオープンさせて、現状のコスト課題を解消したい考えである。
同時に、原価率を抑える取り組みに力を入れてきた。タコベルの商品は野菜をふんだんに使うことに加えて、調理の手間がかかるためスタッフの頭数が必要で、他のファストフードチェーンに比べてどうしても食材費や人件費といった原価がかかってしまう。そこでオペレーションの改善に一層の注力がなされている。
例えば、原料の調達先だ。これまでタコスなどに使われるトルティーヤ生地は中国から調達していたが、インドの方が安く手に入るということで変更した。ソースも日本製から韓国製に切り替えるなど、その時々でコストバランスを見ながら柔軟に調達先を選択しているという。
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