『走れ! ダーウィン JR北海道と柿沼博彦物語』は、DMVの開発エピソードをはじめ、JR北海道の先進の取り組みを紹介している。2009年の社長年頭挨拶でDMV開発の決意を表明した中嶋尚俊氏は2011年9月に自殺し社会に衝撃を与えた。柿沼氏にローカル線問題解決を指示した坂本眞一氏(後に社長、相談役)も、本書刊行の5年後、2014年1月14日に水死体で発見された。自殺とみられる。2人とも本書で紹介され、柿沼氏の心強い援軍として記述されている。今となっては虚しい。DMV実用化が手向けになるだろうかJR北海道がDMVを開発したきっかけはローカル線の活用だった。DMV開発の経緯を紹介する『走れ! ダーウィン JR北海道と柿沼博彦物語』(綱島洋一著、中西出版)によると、発案者の柿沼博彦氏は深名線の廃止の経験から「鉄道に対する地域住民の愛着は強い。鉄道は地域の文化だ。安易にバス転換を進めるのはダメだ」と、低コストの鉄道車両を検討。幼稚園の送迎バスを見て、これを線路に載せられないかと考えたという。
柿沼氏の目指したDMVの運用は、DMVは鉄道のない地域を巡回して乗客を集め、鉄道にモードチェンジして主要駅に向かうための乗りものだ。乗客だけではなく、宅配便などにも利用できる。そのためには、連結して走行させたいし、ほかの列車も走る幹線区間に乗り入れたい。
徳島県が導入するDMVは、開発者が目指した理想とは違う。ローカル線の活用という部分では共通だけど、国のガイドラインを順守するため、実用性は発揮しにくい。そこで観光面を主目的とした。
しかし、用途はどうであれ、実用化へ動き出した。これは大きな進歩だ。車両メーカーとしても、せっかく作ったからにはほかの路線にも売り込みたいだろう。これはDMVを検討する他自治体にも朗報だ。冒頭で触れた山形県では「デュアル・モード・ビークル推進協議会」が存続しており、2016年5月に総会を開催している。
JR北海道が手を引いてしまった今、DMVの主戦場は徳島県だ。阿佐海岸鉄道が成功すれば、ローカル線活性化問題に1つの答えを示せるだろう。
鉄道と生まれ変わった宮城県女川町を旅した
なぜそこに駅はできるのか?
「乗客がいない列車を減らす」は正解か?
JR北海道は縮小よし、ただし線路をはがすな
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ローカル線の救世主になるのか――道路と線路を走るDMVの課題と未来Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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