新横綱は本当に大丈夫なのか 3月の不安赤坂8丁目発 スポーツ246(2/3 ページ)

» 2017年01月24日 12時05分 公開
[臼北信行ITmedia]

決定までのプロセスが「大甘」

 さらにもっと違和感を覚えたのは初場所の14日目に大関稀勢の里が初優勝を決め、早々と横審の守屋秀繁委員長(千葉大名誉教授)が異例の発言を口にしたことだ。

 「明日も勝って14(勝)にしたほうがいいだろうけど、優勝が決まっちゃったわけですよ。そんなに重要視しなくてもいい状況にないだろうかねえ。もうよろしいのではないかと思いますけどね」

 このように翌日千秋楽の白鵬戦の結果に関係なく、初場所後の横綱昇進を強く後押したのである。しかも同日は二所ノ関審判部長(元大関若嶋津)までもが「何よりも優勝したことが大きい。昨年は年間最多勝で安定感もある」とメディアを通じて述べ、横綱昇進を諮(はか)る臨時理事会の招集を八角理事長(元横綱北勝海)に要請していた。こうなれば、大きな権限を持つ2トップの発言が引っ繰り返ることはまずない。つまり、この14日目の時点で稀勢の里の横綱昇進は決定的となっていたのである。

 さらに千秋楽では取り組み前からNHKの大相撲中継でもアナウンサーがこれらの流れを受け、14日目で初優勝を決めていた稀勢の里の横綱昇進がほぼ決まったかのようなコメントを並べながら平然と実況を続けていた。この千秋楽は結びの一番で“無事”に稀勢の里が白鵬を破ったからよかったようなものの、これでもし負けていれば初優勝とはいえ横綱からの白星がないまま昇進が決まる運びとなっていたのだ。いくらなんでも、このプロセスは「大甘」ではないだろうか。

 多くの好角家はもちろんのこと、角界関係者も一刻も早い日本人横綱誕生を待ち望み、その最右翼である稀勢の里に大きな期待をかけていた。だからこそなのだろうが、それこそ立場のある人が千秋楽を待たずして横綱昇進に事実上のゴーサインを出してしまったのは明らかなフライングだったと思う。14日目の時点で稀勢の里の横綱昇進の話題を振られても「終わってからだ」と慎重な姿勢を崩さなかった八角理事長のように大人の対応をすることが、横審・守屋委員長と二所ノ関審判部長には必要ではなかったか。何か日本人横綱誕生を先急ぐが余り、浮かれムードになって黙っておくべきなのについ失言してしまったかのような感も見受けられる。

稀勢の里の成績など(出典:日本相撲協会)

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