観光列車の次のブームは廃線かもしれない杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/4 ページ)

» 2017年02月10日 07時30分 公開
[杉山淳一ITmedia]

廃線観光の課題は情報発信

 乗りものがある場所、線路や駅舎跡が残る場所など、施設の形態はさまざまだ。廃線巡りは楽しい。しかし、現役の路線に比べると難度は高い。何しろ廃線になっているから鉄道では行きにくい。路線バスを利用できればいいほうで、バス便すらない場所もある。そもそも公共交通機関の利用者が少ないから廃線になるわけだ。

日本旅行が2015年に開催した廃線観光ツアー「生野銀山・神子畑選鉱場跡&明延一円電車まつり 訪問の旅」(出典:日本旅行) 日本旅行が2015年に開催した廃線観光ツアー「生野銀山・神子畑選鉱場跡&明延一円電車まつり 訪問の旅」(出典:日本旅行

 一昨年、岩見沢から富良野へレンタカーで移動中、三笠鉄道記念館の道しるべを見つけて、ここにあったか、と気付いた。もっと早く知っていれば、立ち寄る日程を組めたかもれない。しかし、事前に知ろうにも、廃線は時刻表の地図には載っていない。なぜなら廃止されたから。それに懲りて、別の記念施設の場所を調べて行ってみると、その日は休館日だったりする。

 廃線観光の課題は情報の不足だ。施設が情報を提供したとしても、情報のあり処が分かりにくい。時刻表の地図には掲載されないし、ネット上でも探しにくい。「地名」「現役時代の鉄道名」「廃線」で検索すると、ようやく見つかる。しかし、そもそも「地名」や「現役時代の鉄道名」はあらかじめ知識がないと入力できない。

 旅行業界大手の日本旅行は、廃線観光の需要を見込んだツアーを実施している。例えば、2015年に開催した「鉱石の道・一円電車保存車両を巡る『生野銀山・神子畑選鉱場跡&明延一円電車まつり 訪問の旅』」は、保存電車の運行日に合わせて貸し切りバスを活用し、情報と移動の不便を解消して好評だったという。このツアーは「鉄旅オブザイヤー2015」の審査員特別賞を受賞している(関連記事)。

 施設側にも課題はある。廃線観光施設は各地に誕生し、新しいツーリズムとして認知され始めた。しかし、互いの交流が少なく経験や技術の共有ができていない。動かせそうな保存車両があっても修理できる人や技術がない。近隣の施設と連携した周遊コースを提案したい。鉄道の保存に対するとらえ方も施設によって違う。懐かしむための保存施設か、楽しむための道具にしたいか。

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