情報に溺れぬように「絵を描く」話を理解するために(1/2 ページ)

» 2017年03月01日 05時30分 公開
[泉本行志INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:泉本行志(いずもと・たかし)

 サンダーバード国際経営大学院卒業(MBA取得)。外資系大手経営コンサルティングファーム、外資系大手IT企業、ベンチャー企業での事業立ち上げを経て、株式会社アウトブレイン社を創業。現在はロジックと感情を融合した思考法を活用し、事業アイデアの立案・戦略策定・業務改善コンサルティング、問題解決手法の教育プログラムを開発・提供している。ブログ「STREET SMART プロジェクトの現場を勝ち抜く技術


 プロジェクトの初期段階で行うことの多いヒアリング。一般的には相手の話を聞きながら必要な情報を抽出し、足りない部分はこちらから質問していくという流れで行っていきます。

 しかし実際は、業務目的、手順、業務上の問題、人間関係、苦情、不満……。さまざまなカテゴリーのさまざまなレベルの話がぐちゃぐちゃに飛んでくることはよくある話です。ヒアリング対象者が同時に複数人いるとなると、さらに話の矛先があちこちに散乱します。

 相手の言葉を拾いながら、何とかロジックでつないで理解していく作業も、リアルタイムで扱える量もスピードもやはり限界があります。これをいかにスムーズにこなすか? 私は翻訳者の方のスキルを参考に、ある技を身につけてきました。

 それは、「絵を描く」ことです。

 かつて翻訳作業をやっていたときです。当時英語のビジネス書とebookの2冊の翻訳を同時進行でやっていました。なるべく自然な日本語に意訳しながら進めていましたが、とても時間がかかりました。本業の合間でやっていたこともあり、なかなか時間が取れなくなり、ebookは途中でプロの翻訳家のお力を借りることにしました。

 そして、最終的に、途中まで自力でやった自分の翻訳と、プロの方にやってもらった翻訳を比較してみました。すると、自分ではうまい意訳を意識した日本語訳のはずだったのですが、プロのそれと比べるとやっぱり日本語のナチュラルさに白旗を上げざるを得ませんでした。

 そこで翻訳が終了して間もなく、私はその翻訳家の方に無理を言って会いに出向き、 「なぜそんなに早くかつナチュラルな日本語に翻訳ができるのか? コツを教えてくれ!」と迫りました。

 すると、「絵を描く」という言葉が出てきました。その翻訳家いわく「英語を日本語に訳すのではなく、読んだ英語から頭の中に絵を描き、それを見ながら日本語で記述していく」。これがコツだということでした。

 この話を聞き、ピンときました。それって外国語を日本語に翻訳するだけでなく、日本語を日本語で理解するのにも役立つのでは? と。

 ここでいう「絵を描く」とは、相手の話していることを、絵や図解として頭の中にぼんやり描きながら話を聞く方法です。

 「人の話を理解する」というのは、相手の言葉を自分の言葉に翻訳することに他ありません。だとすると、「相手の言葉」を直接的に「自分の言葉」につなげ、いきなり理解しようとするより、いったんイメージで受けとめておく(=絵を描く)方が、処理スピードが早く済むのではないかと考えました。

話を理解するために「絵を描く」(写真と本文は関係ありません)
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