北陸新幹線の新大阪駅、その先をどうするか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/4 ページ)

» 2017年03月17日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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いっそ四国新幹線へ向かってはどうか

 北陸新幹線の全ルートが確定し、政府が1973年に決定した整備新幹線計画すべてのルートが定まった。建設予算の段取りなど解決すべき問題はあるけれど、実現に向かっている。そこで、次の新幹線計画が動き出そうとしている。新幹線計画はまだ終わりではない。1970年に全国新幹線鉄道整備法で定められた基本計画線は11本ある。このうち中央新幹線はJR東海が着工したから、具体的なルートが確定していない路線は10本だ。

建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画について、運輸省告示第466号によって追加された路線。このうち、中央新幹線はJR東海が自費で建設すると表明し実行に移された 建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画について、運輸省告示第466号によって追加された路線。このうち、中央新幹線はJR東海が自費で建設すると表明し実行に移された
瀬戸大橋は新幹線を通せる規格で作られている。四国新幹線の編成が短い場合、JR東海は東海道新幹線の16両編成にこだわったとしても、山陽新幹線、北陸新幹線経由で東京へ直通可能(出典:四国鉄道活性化期成会) 瀬戸大橋は新幹線を通せる規格で作られている。四国新幹線の編成が短い場合、JR東海は東海道新幹線の16両編成にこだわったとしても、山陽新幹線、北陸新幹線経由で東京へ直通可能(出典:四国鉄道活性化期成会

 このうち、通過予定の自治体によって具体的な検討が行われている路線は四国新幹線・四国横断新幹線だ。奥羽新幹線、山陰新幹線、東九州新幹線も議員団による誘致活動、自治体に調査費の予算化などの動きがある。関西の8府県と4市で結成した関西広域連合も、3月5日の定例議会で、リニア中央新幹線と北陸新幹線の大阪開業へ働きかけるともに、四国新幹線や山陰新幹線、関西国際空港への高速アクセスなどについても取り組みを続ける議案を採択している(関連リンク)。

 基本計画線では四国の活動が一歩リードしている。

四国新幹線は基本計画案のうち、2つの海峡ルートを除外して再検討すると投資効果が高いと試算された(出典:四国鉄道活性化期成会) 四国新幹線は基本計画案のうち、2つの海峡ルートを除外して再検討すると投資効果が高いと試算された(出典:四国鉄道活性化期成会

 そもそも、1988年に開通した瀬戸大橋は新幹線に対応する設計だ。瀬戸大橋は線路4本を通せる構造となっており、現在は内側2線を在来線として使っている。本来は在来線2本、新幹線2本を並べられる。新幹線用の空間は複線の間隔も車体の大きさに合わせて幅広くなっている。また、1985年に開通した大鳴門橋も新幹線の複線用の空間が用意されている。将来の四国新幹線を考慮した設計だ。

 具体的な構造物があれば、四国に新幹線を、という気運も高まる。2012年に九州、北海道、北陸新幹線の着工が決まると、次は四国にという声が高まった。特に2014年の動きに注目だ。四国4県と四国経済連合会が「四国の鉄道高速化検討準備会」を結成。四国新幹線と四国横断新幹線について事業費用と経済効果の試算を発表した。基本計画のうち、事業費用が大きい大阪〜徳島、松山〜大分を除くと採算性が高いという結果が出た。現在はこの試算検討ルートをまとめて四国新幹線と呼んでいる。

 その後、「四国の鉄道高速化検討準備会」は「四国の鉄道高速化連絡会」へ発展。ここに四国商工会議所連合会と四国公共交通議員連盟が加わる形で、「四国鉄道活性化期成会」が作られた。

四国新幹線を岡山から山陽新幹線に直通した場合の所要時間。東京と四国の各都市は、現在の東京〜函館間よりも便利になりそうだ。四国4県都間の時間短縮効果も大きく、四国を“一国”にしそうな勢い(出典:四国鉄道活性化期成会) 四国新幹線を岡山から山陽新幹線に直通した場合の所要時間。東京と四国の各都市は、現在の東京〜函館間よりも便利になりそうだ。四国4県都間の時間短縮効果も大きく、四国を“一国”にしそうな勢い(出典:四国鉄道活性化期成会

 四国新幹線は整備延長が302キロメートル、概算事業費が1.57兆円。年間の経済波及効果が169億円となり、費用便益比は1.03となる。費用便益比は1.0を超えると投資効果アリと見なされる。ちなみに北陸新幹線京都〜新大阪間は、北回りルート、南回りルートとも1.1であった。

 四国鉄道活性化期成会によると、四国新幹線が開業した場合、岡山で山陽新幹線に直通すると想定して、新大阪〜高松間は1時間15分。新大阪〜徳島・松山・高知は1時間30分台に収まる。東京〜高松・徳島・松山・高知は約4時間だ。また、四国の4都市はそれぞれ1時間以内で結ばれる。こちらの効果も大きい。

 北陸新幹線と山陽新幹線の直通は可能だと思う。けれども、もし、JR西日本の言うような信号システムの違いが障害となり、大深度地下の新大阪から地上高架の山陽新幹線への接続に難があるとするならば、新大阪から南進し、和歌山県を経由して、トンネルを掘って淡路島に抜けて大鳴門橋を通るルートを考えたらどうか。四国新幹線で便益計算から除外した新大阪〜徳島間の復活だ。泉佐野市を経由するから、関西国際空港方面の接続も考えられる。

 新大阪駅は、これから具体的な用地取得や設計段階に入る。山陽新幹線に向けるか、四国新幹線に向けるかで仕様が変わる。少なくとも、新大阪駅で終わりという考え方だけはしないでいただきたい。新幹線は個別案件ではない。国の高速鉄道網の1つとして考えなくてはいけない。

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